ネヴァーウィンター・キャンペーン 第九話「暴動」
黒野さんDMのD&D 4th ネヴァーウィンター・キャンペーンの九話です。
ニュー・シャランダーでアデミオス・スリードーンの策謀を暴き、エラドリンたちを救った冒険者たち。今回は冒険者の不在時に状況が大きく変わったヘルム砦を巡る策謀の話です。
全員がレベル8まできたので、戦闘もハードでした。重傷までは当たり前にいきますね。
パーティー
各キャラクターの詳細は割愛。今回は夏瀬さん、はたはたさん、妖くん、緋の四人PLでした。ヘンチマンは寡黙なドワーフの狙撃手グランガンが参加。
- “幻王”アシュタール/指揮役(アーデント) PL:夏瀬さん
ヒューマンの男性。テーマはネヴァーウィンター・ノーヴル - プラチナ/制御役(ブレードダンサー) PL:はたはたさん
ピクシーの少女。テーマはハーパー・エージェント。 - ベアトリス・ウィンターホワイト/防衛役(ソードメイジ) PL:緋
エラドリンの女騎士。テーマはイリヤンブルーエンのフェイ。 - ギルターク・ヴァーリン/撃破役(ローグ) PL:妖くん
ドラウの傭兵団、ブレガン・ドゥエイアゼのスパイ。 - 秘術弓士オリリエン、エラドリン、シャランダー評議員
- グランガン、寡黙なドワーフの狙撃手
オープニング:秩序の崩壊
冒険者たちが妖精郷から帰還するまでの数ヶ月でヘルム砦を巡る状況が大きく変わった。ヘルム砦に住む民の表情は暗い怒りに満ちている。治安は乱れ、治安維持を担当するミンターン傭兵団は増員され、冒険者の知らない荒くれ者としか呼べない者たちも入り込んでいる。状況はわからないが街の様子が激変している。
見知った傭兵団員を取り次いで、ヘルム砦の隊長、ダンフィールドと評議長のアリサーラ・カラム(コアミアのパープル・ドラゴン・ナイト出身だと言われている女性)と面会するまでに一昼夜を要した。
ダンフィールドはヘルム砦の現状を簡潔に説明してくれた。
「我々の指揮下にない部隊が動いている。彼らは罪のない人々を呪痕持ちたちだと決めつけると、ヘルム砦の治療院に攫っていくか、勝手に設置した絞首台で私刑を行っている」
アリサーラは政治的な状況について補足する。
「どうもネヴァレンヴァー行政府の様子がおかしいのよ。ダカルト・ネヴァレンヴァー卿の名で、ヘルム砦の民に“呪痕持ち”の可能性があるならば、療養所に放り込めという布告がなされている。それを根拠にミンターン傭兵団の過激派が、次々とヘルム砦の民を誘拐して療養所に放り込んでいる。療養所の“聖女”ロヒーニなら、むやみな人々の誘拐に反対するはずなんだけれど、彼女がいなくなったの。監禁されている、という噂もあるわ」
「本来は治安を守るはずのヘルム砦の守護兵たちが、民衆を抑圧している。民衆の我慢は限界まで来ていて、爆発まで時間がない状況よ。最悪の場合、暴動に発展しかねない。そうなれば、ダカルト卿のニュー・ネヴァレンヴァー傭兵団による鎮圧が行われる。この砦はなくなり、多くの者たちの行き場所がなくなるでしょうね」
冒険者たちがネヴァーウィンターに帰還した理由は、キムリルの死の真相の解明だ。とはいえ、ヘルム砦を見捨てることもできない。何が起きているのか、この目で確認しなければならない。
バトル1:ソードコーストの野盗くずれ
ヘルム砦の街区では、ミンターン傭兵団の鎧を着た荒くれ者たちが、民家のドアを蹴破り、住民たちを連れ去ろうとしていた。彼らを制止しようとした冒険者たちの前にとりわけ戦と殺戮に酔った顔をしていた集団が立ちはだかる。
「俺はソードコーストで一番残忍な山賊団の、オニの大頭目ゴンゴロウ舐めちゃあきません」
見るからに化け物じみた暴力を宿したその男は、配下も含めてミンターン傭兵団の征服を着慣れていない様子だ。おそらく野盗くずれ。腕自慢でミンターン傭兵団に入り込んだか。いずれにせよ、暴力で人を不幸にするクズだ。
「ゴンゴロウさんが出るほどの相手じゃないっす。俺たちでやるんで」
腕利きのベヒモスハンター、ノームのくずり士、ゴライアスの戦士たちが各々の武器を持ち出して、冒険者たちを挑発する。ゴンゴロウは興味を失った様子で街へと消えていく。
しかし、残った野盗くずれなどニューシャランダーの脅威を突破した冒険者たちの相手にはならない。ソードコーストの野盗くずれたちは壊走した。
バトル2:暴動
野盗たちが壊走した後、ヘルム砦の民衆が様子を教えてくれた。治安が悪くなってきたあたりで大量の野盗くずれがミンターン傭兵団に加入してきた。しかし、彼らは“呪痕持ち”を療養所に放り込むことしか頭にない。それでも療養所に放り込まれればマシな方で、気に入らないことがあるとすぐに絞首刑にするのだと。馬鹿げている。
その時、知らせが入った。昔ながらのミンターン傭兵団のたまり場、汚れたおいぼれドワーフ亭で、ヘルム砦の住民たちとミンターン傭兵団が睨み合っている。住民たちの方が圧倒的に数が多く、怒気をあらわにしている。
「お前ら傭兵は街の人間を攫ってくる。呪文荒廃の影響で変異した呪痕持ちの人間を療養所に入れると言いながら呪痕がなくても構わず攫っている」
過激派のファラスというハーフエルフが言う。「この人でなし!」
ドローラというドワーフの男が叫ぶ。「ヤツらをつるせ!」
ミンターン傭兵団の集団の中にはヘルム砦隊長ダンフィールドと評議長アリサーラがいる。彼らは住民たちに取り囲まれ一宿即発であったが、最悪の事態には至っていなかった。これまでは。
突如、ダンフィールドが狙撃された。人々は怒号をあげ、誰も相手の言っていることなんて聞きやしない。
その時“幻王”アシュタールが口を開いた。
「ダンフィールドは真実の男だった。この砦の未来を憂い、ずっと君たちに奉仕してきた。その彼を殺すのか。最後まで手を上げなかった彼を讃えて、この場はもう終わりにしよう」
周りの者たちは薄々ながら聞き及んでいた。“幻王”アシュタール、ネヴァーウィンター王家の後継者にして、王を望むこの地の人々にとっての最後の希望。人々の気勢は下がり、不足の自体は避けやすくなっただろう。
しかし、ソードコースト野盗の頭目、ゴンゴロウにとってそんなことは関係なかった。力なく倒れたダンフィールド隊長を囲むように、ゴンゴロウ率いる盗賊団がもう一度現れた。
「どこまで知ってるんだお前たち?」
ゴンゴロウは答えず、獰猛な笑顔を向けてきた。高台に狙撃主、倒れたダンフィールド隊長の息の根を止めるためにここでの戦闘となったのだろう。
脅威度13(冒険者の平均レベルは8)の厳しい戦闘となったが、イニシアチブの目が全体的によかったことにより作戦がハマり、冒険者の勝利となった。
ゴンゴロウたちとの戦闘に勝利した冒険者に街の住人が告げる。
「予言者ロヒーニ様はこいつらに閉じ込められたんだ」
ハーパーのプラチナは覚悟を決め、ドラウの暗殺者ギルタークは同意した。
「僕らがいくしかないよ!」
「元よりそのつもりだ」
バトル3:狂気の声
療養所のあるヘルム聖堂の入り口は沈黙であふれていた。生存者など一人もいない。あるのはアンデッドの気配のみ。奥から狂気に満ちた声がする「出してくれ!」「ダ~メ」永遠に終わらないやり取り。
様子のおかしさにきずいてヘルム聖堂に踏み込むと、そこはアンデッドの巣窟となっていた。中心にはここでアンデッドを量産するような事態が起きていたことを示す、死者の匂いで満ちていた。
ベアトリスは言う。
「この状況を作ったものは気が狂っている」
通りの向こうからアンデッドが姿を現した。
青白い顔に異常なまでに発達した肋骨。人間の魂を吸い、消化しようとするアンデッド、スピリット・ディヴァウラー。
通常の三倍の呪文を使うしゃれこうべの魔術師スカルロード。
増援として登場した闇の騎士、ダイアナイト。
強大な敵との戦闘が冒険者たちを次々と重症状態へと導いていく。
冒険者たちが辛くも勝利したとき、ヘルム砦の正印が輝きだした。ヘルム神は死んだはずだが、何かあるのか?
エンディング:次回予告
「この地に何があったか知っているか。神は死んだ。そして闇が来た」
嫣然と微笑む女が告げる。「全部狂っている。あなたも、私も、何もかも」
次回予告、「呪力の底 - アサイラム - 」