緋ニッキ

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グランクレスト・「七つの大罪」 キャンペーン本編 第一話「その怒りは誰のため(後編)」

夏瀬さんGMのグランクレスト・キャンペーン第一話の後編です。

タランの街領主のラオグスト・タージ(憤怒の子爵)の元にセブン・シン帝国皇帝の従属騎士であるライアスが訪れ、彼の栄達のための謀略に巻き込まれたPCたち。今回はライアスへのラオグストの逆転の話です。面白かった!

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■初期設定・パーティー

初期設定、各キャラクターの詳細は下記参照。



  • “憤怒の騎士”ラオグスト・タウラージ ロード/キャバリアー PL:粥さん

    壮年の男性。タランの街を宵闇の魔神から救った領主。母国に妻子を残している。

  • バシリオ・シスラエール アーティスト/ドラゴン PL:しのさん
    シスラエール最後の竜。ラオグストに命を救われ、彼の戦士となることを誓う。

  • エリザベス・バートリー  メイジ/サイキック PL:緋
    バートリー商会の武器商人。ラオグストをセブン・シン帝国への反乱へと誘う。

  • 艦長 投影体/オルガノン PL:黒野さん
    混沌を駆逐するために建造された超時空戦艦のAI。エリザベスとの契約に基づきラオグストを支援する。

前回のあらすじ:彼の声は皇帝のもの

「これは公務である」 

ふとしたことで皇帝に気に入られ貴族の地位を手に入れた悪漢ライアス。彼は皇帝から賜った従属聖印とフラッグを持ち、七君主と同等の発言力を持っている。 賄賂と高価なものをこよなく愛するが自分の金はびた一文も使いたがらない。

皇帝直属の従属騎士ライアスは公務と言い放ち、都市タランのあらゆるものを奪うことを宣言した。彼の思惑に従い、資源を求めてタランの街から隣国レガルトとの国境近くの混沌核に赴いたラオグストたちは、隣国レガルトのマロー将軍の部隊と戦いに勝利し、資源を獲得した。その機に乗じて、ライアスの悪友ギルダ(18レベルシューター)はラオグストの配下の家族を人質に取りラオグストの暗殺を狙ったが、PCたちの奮戦により勝利した。

ラオグストはタランの街に帰還する。

オープニング:彼の声は皇帝のもの

セブン・シン帝国皇帝の従属騎士ライアスは帰還した混沌戦艦のハッチの前で怒号を上げた。それを館長の幻影が押しとどめる。

「公務である。ハッチを開けよ」

「官姓名ライアス、貴殿の奉ずるセブン・シン帝国の権威を本艦は認めていない。原住民対応シークエンス2に従って対応する。君は本艦に乗船できない」

「このような武装が一領主の配下にあるなど看過しがたい。この本船を接収したい」

「本艦がここにいるのはバートリー商会との契約に基づく。バートリー商会を通して、要請をいただきたい」

「バートリー商会はラオグスト殿との商談中だよ。だから、ラオグスト殿と直接お話いただきたい」

バシリオ・シスラエールとエリザベス・バートリーを従え、ラオグストが登場する。

「ライアス卿。もはや言い逃れはできぬ。貴殿の盟友ギルダは討ち取った」

「ギルダめ。仕損じたか。たしかにこの件は俺の仕業だ。だが、俺の声は皇帝のものだと思っていただこう。お前には俺を裁く権利はない」

笑いながら、ライアスは退出する。

ラオグストは隣国レガルトの捕虜の拘束を老臣グレイスに命じる。これから、身代金の交渉を隣国レガルトと進めることになる。

ミドル1:煉獄の侵攻

己の犯した罪と動かぬ証拠を突き付けられたライアスは驚くほどあっさり罪を認めた。 だが、それは周囲の油断を誘う罠であった。王立特殊諜報機関“煉獄” 王にあだ名す存在を影から影へと葬ってきた集団。 それがライアスを無事、帝都へ帰還させるべく動き出す。

ライアスへの対応のため、老臣グレイス、宮廷魔術師ターシャ、PCたちが集まった夜半に事態は起こった。

領土内のあらゆるところから火の手が上がっている。あり得ぬ速度で回る炎に逃げ惑う大人、へたり込む老人、家族とはぐれ泣き叫ぶ子供。道には無残に踏み潰された人形がぼろきれ同然で落ちていた。

混沌災害に耐え続けた建築物が燃えている。 収穫を迎えた麦が燃えている。長い年月をかけて築き上げた人々の営みが、今、灰燼に帰そうとしていた。

艦長の展開するレーダーにセブン・シン帝国の特殊部隊“煉獄”が捕捉される。“煉獄”は皇帝直属の伝説的部隊であり、歴史の影で皇帝に力を与える絶対的な刃のひとつ。彼らの侵入と同時にラオグストの部下たちはライアスを見失った。ライアスは皇帝の膝元である帝都へと逃亡したのだ。 

ミドル2:分割戦闘

3マップが広げられる。マップの左は住宅地(煉獄×5)で多数の民家に火をつけられている。中央は軍事施設で左右のマップへの射線が通っている(煉獄×2)。右は農地でここにも火がつけられている(煉獄×3)。どこのマップにもタランの街の領民はいる、といった状況。

住宅地はバシリオ、軍事施設は遠距離砲撃組のエリザベス・艦長。農地はラオグストという配置で“煉獄”と向き合う。彼らは1シーンに1回攻撃力・防御力が激増する特技、味方のHPが0になった場合に行動値・攻撃力が激増する特性を持ち、全員が同じスペックを持つ強力な部隊だ。加えて、PCたちは軍を持てず、装備も制約された中で住民を守りながらの分割戦闘を強いられる。

しかし、中央に陣取ったエリザベス・艦長は両名とも多数攻撃を駆使する長遠距離攻撃の使い手であり、天運を大量につぎ込むことで、3ラウンドで増援も含めた“煉獄”を撃退した。

そして、GMの想定ラウンドよりも早く煉獄を撃退したPCたちは軍を整え、ライアスを追撃する。

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クライマックス:ライアス戦

逃げるライアスをラオグストの部隊が包囲する。切り立った崖の狭間にライアスと彼を先導する煉獄の部隊長、剣無言が追い詰められる。

愛馬キルシェに跨り、ラオグストが登場する。

「逃げおおせられると思ったのか」

「“煉獄”は闇の伝説。表舞台では力は出せぬ。しかし、時間は稼ぎましょう」

「俺はここまでなのか」

クライマックスの戦闘はすぐに終わった。3レベル部隊を率いたPCたちは前マップより強力な力を振るえる。加えて、“煉獄”はマスコンバットでは「大部分の特技を使用できない」 という制約を持つ。1ラウンド目の半ばでPCたちの勝利となった。

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エンド1:その怒りは誰のため?

投入された“煉獄”部隊はすべて切り伏せられ、ライアスは追い詰められた。彼はラオグストの表情を慎重に見極めると謝罪の言葉を並べ立てる。

「すまなかった。だがこれも公務である。皇帝陛下の命でタランの街に火を放ったのだ。非道なことをした。だが、私の言葉はすべて皇帝陛下のお言葉である」

ラオグストはライアスを睨み付ける。

「すべて皇帝陛下の命であったと?」

バシリオが吼える。

「お前のようなやつが聖印を持つだなんて」

エリザベス・バートリーがラオグストに問う。

「ラオグスト、君の怒りは誰のためだ?」

ラオグストがライアスの首を撥ねないのは、皇帝への忠誠心ではなく、彼の妻子が帝都に留められていること、いたずらにライアスの首を撥ねれば、強大なセブン・シン帝国の軍勢がタランの街を包囲することが目に見えているためだ。だからこそ、ラオグストの決断を促すためにエリザベスは問うた。

「私の怒りは私や私の家族のためでも、ライアスへの怒りでも、皇帝のためでもない。ただ、付け入る隙をつくり、領民に痛みを与えた私の不甲斐なさに向けられている」

ラオグストの怒気は、ライアスに短剣を振るわせる。彼らはすれ違い、ライアスが気絶した。エリザベスはため息をつく。

「その言葉は帝都には届かない。禍根は残さず断つべきだよ、ラオグスト」

「こちらに付け入る隙を与えてはならない。できることは一つだけだ。彼の要求どおり資源は帝都へ送る。この地に与えた損害は彼の私財から賄って貰う」

家族のことを思いながらも、ラオグストはそのことを口に出さなかった。気絶したライアスは私財を没収されたが、帝都への帰還を果たした。

エンド2:暗君

暗幕の奥に皇帝の影が映る。ラオグストの怒気に心底怯えながら俯くライアスに皇帝が問う。

「ライアスよ。生きて帰ったか。無事ならば良い。何があったのじゃ?」

「何も。ただ、ラオグストの近くにはいたくないと思ったのです」

「そうか。ならば朕の傍で励むがよい、わが友ライアスよ。大儀であった」

皇帝は微笑むとライアスの従属聖印を回収する。何が起きたのかを問う気は皇帝にはなく、彼の手はライアスや無数にいる彼の家臣によって集められた財貨を見て微笑むのみ。天下泰平と笑う皇帝の下にいるにもかかわらず、ライアスはラオグストの憤怒を思い出し、恐怖に震える。もはや二度とあの男には近寄るまい。

エンド3:ラオグストの家族

戦禍で亡くなった者の家にラオグストとバシリオ、ターシャが弔問する。領民は戦禍の中にあったが、それを打ち払ったラオグストへの敬意を忘れない。

領主の館への帰途において、バシリオは意を決したように言った。

「ラオグスト様の家族を呼びましょう」

「駄目だ。君主は甘さを持つべきではない。家族を救えば、それはまたお前たちや領民に迷惑をかけることになるだろう」

「甘さがなければ良い君主であるというものではないでしょう。精一杯、迷って決めるからこそ、手を差し伸べられるものもある」

「すまなかった。ありがとう」

ターシャがタランの街の子供たちを見ながら言う。

「今回の件は信念に基づいた行動です。子供たちも言っていました。王様が悪いやつらを追い払ったって」

和やかな表情となったラオグストの前に、再び帝都からの使者が訪れる。

「森を15。伐採して献上する栄誉を皇帝陛下から賜りました。立派な木を所望であるとのことです」

エンド4:策謀

強欲伯爵(グリード・カウント)と呼ばれる狐の紋章をつけた騎士、アイオン伯爵は自らの領地で彼の配下と語る。

「やはりラオグストの怒りはライアスを追い払ったか。しかし、ラオグストがライアスの首を撥ねないとはおそれいった。内心ははらわたが煮えくりかえっていただろうに。皇帝陛下の権威もしばらくは安泰だ」

「だが、誰かが始めねばならない。周辺国家の力がいる」

彼は油断のない瞳で隣国レガルトを含めた、セブン・シン帝国の周辺地図を睨んだ。

エンド5:戦火の根源

異界の技術で構築された艦橋でエリザベスは艦長の幻影と語る。

「権力と領土を持つ皇帝、彼に怒りを持ちながらも家族と領民を人質にとられ反逆できない領主、領主に雇われた異鉄の軍隊……つまり、我々。そして、暗躍する隣国たち。この国をもう一度再構築するための機は熟しそうだね」

「この地でファースト・ロードが行ったことをもう一度やろう。七国をひっくり返し、戦火の根源を断つ。私たちの共通の利益のための作戦を開始しよう」