ネヴァーウィンター・キャンペーン 第七話「欺瞞の裁判」
黒野さんDMのD&D 4th ネヴァーウィンター・キャンペーンの七話です。
ニュー・シャランダーの主戦派、アデミオス・スリードーンの策謀によりエラドリンに囚われた冒険者たちが、牢獄から脱出し、策謀を暴いて、不正な裁判を逆転する話でした。
パーティー
各キャラクターの詳細は割愛。今回フルメンバーの参戦。
- アシュタール/指揮役(アーデント) PL:夏瀬さん
壮年の男性。テーマはネヴァーウィンター・ノーブル。 - プラチナ/制御役(ブレードダンサー) PL:はたはたさん
ピクシーの少女。テーマはハーパー・エージェント。 - ベアトリス・ウィンターホワイト/防衛役(ソードメイジ) PL:緋
エラドリンの女騎士。テーマはイリヤンブルーエンのフェイ。 - ギルターク・ヴァーリン/撃破役(ローグ) PL:妖くん
ドラウの傭兵団、ブレガン・ドゥエイアゼのスパイ。 - “見濁の”リンボリー/撃破役(エレメンタラー) PL:吉井さん
呪痕持ちの傭兵。魔術師。テーマはスペルスカード・ハービンジャー。
アクト前:高レートMtG
リーマンショックの傷も癒え、好景気を迎えた2010年代の東京。通常のレートに飽き足らず、500gp、あるいはそれ以上の高レートで行うMtGに走る者たち。ゲーム内通貨による賭けは必然的に勝者と敗者を作り出した。
ベアトリスは1400gpを獲得、アシュタールは1000gp、ギルタークは400gpを喪失した。
オープニング1:ギルターク
ネヴァーウィンターの守護卿、ダカルト・ネヴァレンヴァー卿には汚染された人々が使えている。守護卿から逃れるように地下に潜んだギルターク・ヴァーリンは最悪の穴倉で目を覚ました。ブレガン・ドゥエイアゼの首領ジャーラッスルの指令に従い、アシュマダイ(アスタロスの信徒)の巣を単独で攻略し、下水道でアシュマダイの信徒の返り血に塗れている。
沈黙の中、下水道の扉を開いたのはザルビン(ジャーラッスルの配下でブレガン・ドゥエイアゼのネヴァーウィンターの主)が入ってくる。
「ひでぇ有様だな」
「いつものことだ」
「ニュー・シャランダーで動きがあった。アシュマダイの根っこはニュー・シャランダーにも潜んでいて、ネヴァーウィンターを狙っている。それどころか、ワイルドハントが来るかもしれない。奴等の根っこを引き抜いて、枯らせ」
「了解した」
「腕利きを雇っている。“見濁の”リンボリー。コイツと協力してことにあたれ」
「一人の方が楽なんだがな」
ギルタークは闇へと消えた。
オープニング2:リンボリー
汚れた老いぼれドワーフ亭でコンタクトを取ったザルビンという男は知己の名前を出した。
「アシュタール、ベアトリス・ウィンターホワイト、プラチナの三名がフェいの王国の陰謀に巻き込まれた。奴らに今死なれては困る。お前の友達だろ。力を貸せ」
「そんなことより、金を出せ」
ザルビンは袖の下から金袋を2つ取り出す。全部で2000gpある。
「当面の活動資金と報酬だ。ギルタークというドラウにコンタクトを取れ」
「いいだろう。それにあいつらからはまだ金を回収していない」
リンボリーはサンダーツリーを経由してニュー・シャランダーへと向かった。
オープニング3:サンダーツリー
サンダーツリーの廃墟で、リンボリーはドワーフの女暗殺者フィヴリアに出くわした。彼女は不味そうに煙草を吸うと、軽そうなクロスボウのトリガーに指をかけながら言った。
「よう、リンボリー。引き返せ。あいつらは余計なことに首を突っ込んだ。口を出すならアンタも殺さなきゃなんない」
リンボリーは思案する。金にならない提案は話にならない。ただ、自分の魔法とフィヴリアの軽そうなトリガーのどちらが早いのかは問題だ。
そのとき、廃墟の影からドラウの青年、ギルタークが出現した。
「同行者は一人と聞いていた。リンボリーはどちらだ?もう一人は失せろ」
「お前はブレガン・ドゥエイアゼのギルタークか。くっ」
不利を悟ったフィヴリアは廃墟の闇の中へ消えていった。
リンボリーは金袋を一つギルタークに渡した。
「お前の金だ。貰った分だから半分に割ろう」
「長生きするタイプだな」
オープニング4:欺瞞の裁判
ニュー・シャランダーの議会場は欺瞞に彩られた裁判所となった。アデミオス・スリードーンの陰謀はメリサラ・ウィンターホワイト以外のニュー・シャランダー指導者全ての目を欺き、結論の定まった裁判が開廷する。
「被告、ベアトリス・ウィンターホワイトはニュー・シャランダーに対して罪を犯した。共にネヴァーウィンターの調査に向かった六人の同胞を殺害した。ネヴァー森の中でデヴィル召喚の儀式を行い多数の同胞を死に至らしめた。そして、写し世の洞を通り、ニュー・シャランダーにネヴァーウィンターの内偵者を引き入れた」
議長であり、ベアトリスの姉でもあるメリサラ・ウィンターホワイトが反論する。
「証拠がありませんね」
「ならば事実のみを持って裁こう。六人の同胞の死も、デヴィルの召喚も、内偵者の侵入にもすべてベアトリスは立ち会っている。実行できる者は一人しかいない。表決を取ろう。有罪と考えるものは手を上げろ」
有罪9、無罪3。この場にはアデミオスの上司であるコアロンの女司祭、エムレイ・ファイヤースカイの息のかかった議員が大部分だ。
「判決は死刑。執行は翌日。その時には身内から膿を出した議長にも責任を取っていただこう」
アデミオス・スリードーンは邪悪な笑みを浮かべる。
プラチナが反論するが、届かない。
「同じフェイじゃないか。発言権が片方にしかないのはおかしいよ!審議のやり直しを要求する」
「だからなんだ。ニュー・シャランダーに外部の者を招いた罪は消えない」
ベアトリスは怒気をあからさまにしながら言う。
「友を馬鹿にするな。彼らはニュー・シャランダーを救いに来たのだ。秘密に永遠はなく、真実は明らかになる。必ずな」
遭遇1:牢獄
コアロンの女司祭、エムレイ・ファイヤースカイの威光は強力なものだが、全てのものが恭順するわけではない。メリサラの配下のエラドリン騎士の手引きにより、冒険者たち(アシュタール・プラチナ・ベアトリス)は装備を取り戻し、牢獄の鍵を開けた。
そして、エラドリンたちの監視の目を潜り抜けて冒険者達を救出しに来たギルターク・リンボリーと合流する。
「借り(ギルタークは第二話で死に掛けてベアトリスに救われた)は返されたな」
「構わないさ」
「思えば、キムリルの死。それすらも奴等の陰謀だったのかもしれない。ニュー・シャランダーとネヴァーウィンターの共存を願う我らを集め、ここで殺そうとするための。だが、私たちは強い。そうはならないことを教えてやろう」
牢獄の通路を反響して、獣のうなり声が聞こえる。逃亡した一行を獣の餌にしようとする、アシュマダイの卑劣な罠。オウルベアーとディスプレッサー・ビーストを連れたサテュロスが謳うように言う。
「逃亡は死罪だっちゅ。やっちゃう?やっちゃう?」
冒険者達はサテュロスと獣達を一蹴した。6レベルの冒険者は非常に強力だ。
遭遇2:秘密の洞
牢獄から隠し通路を抜けると、巨大な広間に着いた。広間の中央には橋がかかっており、橋の下には無数の蜘蛛が橋から落ちた獲物を食らっている。橋の奥からは強烈な死臭が臭い、ニュー・シャランダーの地下に尋常ならざる場所が隠されていることが分かる。
暗がりから登場したのは2体のトロル。火属性の攻撃で仕留めない限り、永遠に蘇生する危険な敵だ。蜘蛛の巣からはブレードスパイダーがせり出してくる。通路の奥には音波振動で人間を麻痺させる危険な恐竜、デストラカンが2体いる。
10レベル遭遇。最も危険な戦闘となったが5人の冒険者の敵ではなかった。
遭遇3:死体工房
石と鋼の台座が中央に据えられた部屋には死臭が充満していた。無数の動物(多くはエラドリンか?)が殺害されたと思わしき台座には、周囲のクリーチャーの苦痛を増幅する呪いがかけられている。(3マス以内でダメージを受けたクリーチャーは追加で5精神ダメージを受ける)
部屋にはティーフリングとカンビオン(頭部にカラスの羽が生えた好戦的な種族)のアシュマダイの信徒たちがおり、台座に据えられた死体を媒介に強力なデヴィル、サキュバスを召喚していた。サキュバスは支配の魔力を使う強敵だ。
しかし、アシュタールの能力により苦痛の台座の傍に集められた敵は、彼らのターンが来る前に範囲攻撃によって殲滅された。苦痛の台座による精神ダメージは、因果応報にもアシュマダイの信徒に最も効果を発揮したのだ。
台座にはアデミオス・スリードーンの書簡が隠されており、ニュー・シャランダーのエラドリンに対する一連の災厄が彼の指示によって行われたことを証明していた。
エンディング:逆転裁判
メリサラとベアトリスに判決が下るはずの日、議場にてアデミオス・スリードーンは蒼白な表情を浮かべていた。アシュマダイへの書簡。自らの犯罪を証明する動かぬ証拠が提出されたのだ。
コアロンの女司祭、エムレイ・ファイヤースカイも証拠を前に部下を庇いきることはできなかった。裁判の結果は逆転しアデミオスは捕らえられた。しかし、ニュー・シャランダーを巡る陰謀は終わらない。アデミオスを操っていた策謀の根が実体をもって動き出したのだ。
エンディング:次回予告
太古の昔、エラドリンがニュー・シャランダーを離れていたとき、ニュー・シャランダーの地下のポータルを占有していたのは闇のフェイの一団だった。彼らはニュー・シャランダーの近くの森に拠点を構え、エラドリンの様子を伺っている。アデミオスは彼らの走狗として、ニュー・シャランダーを壊滅させるために動いていたのだ。
メリサラ・ウィンターホワイトが告げる。
「千年の戦を終わらせるときが来たのです」
ニュー・シャランダー編は次回で完結する予定です。