グランクレスト・「七つの大罪」 キャンペーン本編 第12話「大海賊フック討伐」
夏瀬さんGMのグランクレスト・キャンペーン第12話です。
帝国とラオグストを両天秤にかける“暴食伯爵”ヴィッカーズ。彼の要請により、ラオグストたちはヴィッカーズ領パターソン海域に救う大海賊団を討伐する。
帝国の領地を削り取れ!
グランクレスト戦記 第12話「大海賊フック討伐」
■登場人物
各キャラクターの詳細は下記参照。
【PCたち】
- “憤怒の騎士”ラオグスト・タウラージ ロード/キャバリアー PL:粥さん
壮年の男性。悪逆なるセヴン・シン帝国から独立を宣言し、七大公国のうち3つを領有するに至った。フィギュアは左端。 - バシリオ・シエラスール アーティスト/ドラゴン PL:しのさん
シエラスール王家の末裔。ラオグストに命を救われ、彼の戦士となることを誓う。ラオグストの妻子の安寧を願っている。フィギュアは右端。 - エリザベス・バートリー メイジ/サイキック PL:緋
バートリー商会の武器商人。ラオグストをセブン・シン帝国への反乱へと誘う。フィギュアは右中。 - 艦長 投影体/オルガノン PL:黒野さん
混沌を駆逐するために建造された超時空戦艦のAI。エリザベスとの契約に基づきラオグストを支援する。フィギュアは左中。今回は事情によりお休み。
【タラン連合国】
- シセル:ラオグストの妻
- フィリオ:ラオグストの長子
- フィネガン:タランの宰相
- マロー将軍:隣国レガルトの将軍。弓と指揮の名手でラオグストを認めている。
- サイガ:イヴィルゲイザー討伐にて散った老将イスマの聖印を告いだ若い将軍。グラッチ・イジェメックの腹心であったが、イジェメック領をまとめなおし、ラオグストの配下となった。
- バージル :冒険者風の旅人。ラオグストの知己であると言い、タランへ極秘情報をもたらした。その正体は帝国時代のラオグスト軍で副官を務めていた男。シエラスール戦役から軍を退き、放浪の旅に出ていたが、ついにタランへとたどり着いた。
【帝国軍・その他】
- 皇帝シン:セヴン・シン帝国の皇帝。暗君であると同時に帝国における最大武力。
- ドミナス・ブランギース:帝国宰相。
- プレッシン:ドミナスの腹心。
- ガルブレイス:帝国軍総司令。ラオグストの後見人でかつての七君主“憤怒”の席、前皇帝の“剣”とまで言われた人物。どこよりも率先して領土内の混沌征伐に乗り出している。 フィネガンは意図が読めぬと警戒しているようだ。
- “強欲伯爵(グリード・カウント)”アイオン:七君主。伝統や誇りを重んじる国を治める、穏やかな美丈夫。 双剣の使い手で智謀にも長けている。
- “傭兵王(プライド・カウント)”ベルム:七君主。またの名を傭兵王ベルム。帝国全土で最強と噂されている豪傑。
- アグニ:悪鬼隊の隊長。ラザールの密命を受けタランに潜入したが、バシリオに捕縛された。
- 王弟デリット:文武両道の偉丈夫。 病で成人まで生きられぬと言われた兄に代わり皇帝になるはずであったが、皇帝の完治により王弟にとどまる。
- “暴食伯爵”ヴィッカーズ:七君主の一人。熊を連想させる巨漢だが、不思議と笑った顔を見たくなる魅力を持つ。 大変な愛妻家で妃に頭が上がらないという噂がある。
- ブラウン・バートリー:バートリー商会会長にして、エリザベスの父。ヴィッカーズにイヴィルゲイザーを用意に屠れる新兵器を提供した。
- マクダネル
ヴィッカーズ領の前領主の息子で義理堅い商人。帝国に恩義を感じている。ヴィッカーズ領のNo.2である。
【旧シエラスール王家関連】
- シルヴェリオ王:シエラスールの王。若き日に武功を立てイルダを娶り、王となる。 もとは王家に代々仕えた騎士でイルダ妃の幼馴染。クラスはパラディン。
- イルダ妃:シルヴェリオ王の妻。シエラスール直系の血を引く。 王家の血を引く女性は例外なく美貌に恵まれ、そのためシエラスールの至宝と呼ばれる。
- シエラスール五兄弟長兄イレネオ:長剣の使い手。誠実で武勇に優れている。5兄弟の中でバシリオに最も君主の才があると見込んでおり、彼の成長を願っている。
- 次兄レリオ:気のいい斧使い。
- 三男リベリオ:色男。華麗なレイピア使い。
- 長女エルマ:生真面目で武勇にも政治に優れる。特に棒術が得意である。
- バシリオ:現在ラオグストに仕えている。
オープニング1:サンドルミア大陸航路(探索中)
サンドルミアへの大陸航路を開拓する開拓団の進捗報告のため、宮廷魔術師のターシャと密偵のグレイスがラオグストと対面していた。大陸航路は道半ばであるが、開拓団の代表者となったターシャは日々手ごたえを感じている状況を熱く伝える。
開拓団の状況報告が終わり、ターシャがラオグストに問うた。
ターシャ「ラオグスト様、今回の遠征に何か気がかりでも?ヴィッカーズ様にいいように利用されてるのではないかと、城下では申すものもおります」
ラオグスト「私が始めたことだ。やり遂げるだけだよ」
オープニング2:イルダへのお見舞い
バシリオは伏せている母イルダにお見舞いに来ていた。イルダはバシリオがくると目を覚まして心配そうに見つめる。
イルダ「私がいない間大変だったでしょう」
バシリオ「大丈夫です。つらい時期もありましたが、家族が一緒にいられるようになった今は幸せです」
イルダ「強くなったのですね。母としては貴方が無事なことが一番だけど、信じる道があるのでしょう。ラオグスト様と共に進みなさい」
バシリオはイルダがいない間に随分大人になった。イルダは母として寂しく思うとともに、家族として頼もしく思っていた。
オープニング3:レミー
大量の書類で埋め尽くされたエリザベスの私室。エリザベスと腹心のJが黙々と決算書類を片付けている。エリザベスがJの隣にいる幼女を見て言った。
エリザベス「その娘はお前の何なんだよ、J?」
幼女「レミーと言います。4歳です」
J「酒飲み友達から、何かあったら娘を頼むと言われてたんです。そしたらソイツ、あっさりと逝ってしまって。俺が何とかするしかなくて」
エリザベス「仕事と子供、どっちが大事なのかな、J?」
J「仕事です。……嘘です、お嬢」
エリザベス「Jの仕事終了。お前の代わりはいくらでもいるんだ。さっさと帰ってね」
Jの代わりなどいないが、この仕事が終わればヴィッカーズ領への船旅だ。後で寝る時間はいくらでもある。翌朝、エリザベスは仕事を片付けると一足先にヴィッカーズ領への船に乗り込み眠りについた。
ミドル1:ヴィッカーズ領の会談
ヴィッカーズ領の議事堂。この議事堂の建設には二人の男が関わった。ヴィッカーズの父である前王と、その友であった先々代の王。二人は盟友であったが、先々代の王は良き人物ではあったが商才でヴィッカーズの父の方が勝った。ヴィッカーズ領の繁栄の礎となる業績を以ってヴィッカーズの父はこの地の王となり、その権勢と商才はヴィッカーズに引き継がれている。
一方で先々代の王の息子マクダネルはヴィッカーズ領のNo.2であり続けている。帝国海軍と繋がりが強く、その影響力はヴィッカーズに勝るとも劣らない。
そのヴィッカーズとマクダネルがラオグストたちへの対応を議論していた。
マクダネル「タランと交易を結ぶとは正気ですか。帝国がなければこの地はここまで発展しえなかった。義理を立てなければ商売は成り立たない。それに海賊の被害もここ数年はさほど大きくなかった。なぜ今になって外部のものを招き入れるのか」
ヴィッカーズ「貴殿の仰ることはもっともだが、今宵の客人の話を聞いてからでも遅くない。よくいらした。ラオグスト殿」
マクダネル「外敵と話す言葉はございません。失礼する」
マクダネルは退出する。そして、ヴィッカーズはラオグストに語りかける。
ヴィッカーズ「あいつはマクダネル。筋が通らぬことは受け入れない男だ。帝国海軍との繋がりもある。この国を中立にするなら壁になるだろう。とはいえ、目の前の課題を解決しないとね。パターソン海域の海賊の話をしよう」
ヴィッカーズ「パターソン海域は魔境だ。その魔境に何百年前から海賊団が巣食っている。大海賊フックを筆頭に不死身のスパロウ、女海賊アルビダ、防壁のエドワード、戦術家フランシス、いずれも劣らぬ猛者たちだ」
ラオグスト「彼らを討伐すればいいか」
ヴィッカーズ「その通り。混沌討伐に長けたラオグスト殿なら簡単なことでしょう」
ミドル2:マクダネルという男Ⅰ
ラオグストは後日、マクダネルの館に招待された。初対面で敵対的であったマクダネルは、帝国への義理とラオグストへの好感で板ばさみとなっていた。
マクダネル「先日は失礼した。今日は国家としての話ではなく、私個人として会談したく場を設けてもらった。まず、貴方とお会いできて光栄だ」
ラオグスト「どこで私を知っていたのか」
マクダネル「皇帝に逆らって遠ざけられたときに貴方の武名を知った。そして、あのガルブレイズ殿の弟子であると聞いた。私もかつては武人に憧れていたのだ。よろしければ一手、手合わせをお願いしたい」
マクダネルは真っ直ぐにラオグストを見て言った。ラオグストは応と答えた。
マクダネルの私邸の庭で両者は切り結んだ。マクダネルは奮戦したが、潜った場数が異なる。倒れて動けなくなったマクダネルに対して、ラオグストは汗一つかいていない。
マクダネル「私個人としては貴方に協力したい。武人を志したこの身なれば。しかし、義理も道理も立たないのだ」
マクダネルは心からそう思っていた。ラオグストは、帝国とタランを両天秤にかけるヴィッカーズより、マクダネルを気持ちのいい男だと感じた。
ミドル3:マクダネルという男Ⅱ
レッドウィンドが調査したことでマクダネルの弱点がわかった。マクダネルは海賊団との戦闘において、海に投げ出された海賊団の少年を救っていた。年端がいかぬ子供だからという理由のみで。
この報告を受けエリザベスは思案した。ラオグストとバシリオの関係性を踏まえると、このことを伝えたらラオグストはマクダネルに肩入れするだろう。とはいえ、領主が望むことを叶えることがメイジであり傭兵である自身の務めである。
エリザベスはラオグストとバシリオにありのままの情報を伝えることにした。
クライマックス1:パターソン海域
パターソン海域は8種の変異律を持つ強力極まる魔境である。フック海賊団はヴィッカーズ領からパターソン海域に放逐された罪人たちの末裔と言われている。そして、頭目のフック船長は数百年前から彼らを率いてヴィッカーズ領への復讐をしていると。
帝国海軍ネオステッド卿の艦隊に導かれ、ラオグストたちは霧に覆われたパターソン海域に侵入した。
因果律によって行動を縛られたラオグストたちに対して、フック海賊団は指揮役、防衛役、撃破役に分かれて的確に攻撃してくる。とはいえ、ラオグストたちは26レベルの強力な英雄である。防衛役のバシリオを基点として味方のダメージを抑えつつ、面攻撃で海賊団を殲滅する。
フック船長率いる海賊船は仲間を見捨てて逃亡し、戦場には殿となった不死身のスパロウ率いる海賊船が残った。
クライマックス2:不死身のスパロウ
殿を務めた不死身のスパロウは戦うそぶりを見せながらラオグストに語りかける。
スパロウ「話を聞いてもらえないか。魔境パターソン海域の海賊は数百年以上前にヴィッカーズ領から追い出された者たちの末裔だ。流刑にあった者たちはフックを残して皆死んだが、フックはこの海の混沌核を我が物にして生き延びている。そして、俺たちを使って故郷に歪んだ復讐をしようとしている」
ラオグスト「だから、どうしたい?」
スパロウ「俺はあるとき、復讐の道具とされて使い捨てられようとしていることに気づいた。道具として死ぬのは真っ平だ。だから俺はアイツを追い落とすチャンスを探していた。混沌核を退ける領主と軍。あんた達のことだ。フックを追い落としてくれるなら、力になるよ」
ラオグスト「海賊行為は二度としないと誓えるか」
スパロウ「誓う。俺たちは何かを奪いたいわけじゃなかった。この船にいるやつは皆そうだ」
スパロウの海賊船は武器を捨て降伏した。そして、ラオグストたちは彼の案内でパターソン海域の深部へと進んでいく。
クライマックス3:海魔クラーケン
フック船長は混沌核へのたどり着き、パターソン海域の真の支配者の力を借りた。海魔クラーケン。10の部位と5000のHPを持つが、変異律によって部位攻撃を無効化する能力を持つ強大な混沌災害である。
冒険者たちはフック船長、クラーケンとその眷属たちを相手にし、クラーケンの攻撃によってバシリオが死の際まで追い詰められる。しかし、エリザベスが変異律を書き換え、10の部位を晒したクラーケンをラオグストが仕留めた。フック船長は雲散霧消して消え、パターソン海域は開放された。
エンディング:マクダレルという男Ⅲ
ヴィッカーズ領に帰還したラオグストたちは街をあげての歓迎を受けた。数百年続いた海賊との因縁は、この街に住むものたちにとって大きな懸案であったのだ。
そして、ラオグストはバシリオを連れてマクダレル亭を訪問した。
ラオグスト「海賊の少年を保護していたと聞いた」
マクダレル「事実だ。見事な手並みだな」
ラオグスト「なんでそうしたんだ」
マクダレル「助けられる命が目の前にあった。人を助けるのにそれ以上の理由は必要ない」
ラオグストはどうしてマクダレルに共感したのかを知った。この男は自分がバシリオを助けたのと同じ気持ちで、敵である海賊の少年を助けたのだ。
ラオグスト「俺の元に来い」
マクダレル「この地で生き、死ぬのがわが使命だ」
ラオグスト「ここを離れろなどとは言わぬ。パターソン海域がわが飛び地となった。ヴィッカーズ領の王として、両地域を治めろ」
マクダレル「俺は帝国のものだぞ」
バシリオ「帝国ばかりが国ではないです。ボクの故郷も今はタランの一部としてうまくやっている。ヴィッカーズ領も、パターソン海域もそうなるべきだ」
マクダレル「ただの近侍ではないようだな。いいだろう、私も覚悟を決めよう」
マクダレルはラオグストの後押しもあって、ヴィッカーズ領の繁栄に寄与し、かつてヴィッカーズの父がそうしたようにヴィッカーズ領の領主となった。そして、この地はマクダレル領となる。
ヴィッカーズは領主の座から退いたが、マクダレル領第一の商人として未だ権勢を誇っている。この地は商才に優れ、運命に導かれたものが活躍する商人の街だ。暫くの間はこの二人の英雄を両輪にして、発展を続けるのだろう。
エンディング:バートリー商会
エリザベスがヴィッカーズ領に進入した時点で、バートリー商会本店からはすべての人員と資材が帝国本店に移動されていた。バートリー商会内部の内紛はいまだ決着を見ない。
しかし、ヴィッカーズ領を抑えたことでバートリー商会の商圏の半分近くはエリザベスが抑えたことになる。とはいえ、ヴィッカーズとマクダレルがそうであるように、生き馬の目を抜く商人界隈では、いつ何が起こるかわからない。
エリザベス「時計を10年進めるよ、J。老人たちの時間はもう終わりさ」
次回へ続く!