ネヴァーウィンター・キャンペーン 最終回(第23話)「ネヴァーウィンター」
黒野さんDMのD&D 4th ネヴァーウィンター・キャンペーンの最終回です。全23話、足掛け2年8ヶ月の長期キャンペーンとなりました。キャンペーン参加者の各位、とりわけDMの黒野さんお疲れ様でした。超楽しかった!
最後に生き残った勢力であるアシュタールとダカルト卿。彼らの物語の結末はいかに。
あらすじ
ネヴァーウィンター。
北方の宝石。
消して冬の訪れることなき都。
災厄の中心。
野望の焦点。
英雄達の集う戦乱の街。
多くの悪意がこの街を襲った。
多くの戦いがあった。
数え切れぬほどの悲劇もまた。
玉座に上るのは誰か。
今、最大の激戦が幕を開けようとしていた。
ネヴァーウィンターキャンペーン第23話 最終話『ネヴァーウィンター』
パーティー
各キャラクターの詳細は割愛。
- アシュタール/指揮役(アーデント) PL:夏瀬さん
壮年の男性。ネヴァーウィンターの正統な後継者となった。 - プラチナ/制御役(ブレードダンサー) PL:はたはたさん
ピクシーの少女。テーマはハーパー・エージェント。 - ベアトリス・ウィンターホワイト/防衛役(ソードメイジ) PL:緋
エラドリンの女騎士。テーマはイリヤンブルーエンのフェイ。ダカルト卿に命の借りがある。 - ギルターク・ヴァーリン/撃破役(ローグ) PL:妖くん
ドラウの傭兵団員。敵対していた妹が家督を継ぎ、ブレガン・ドゥエイアゼと敵対的な関係にある。テーマはブレガン・ドゥエイアゼ・スパイ。
その他の登場人物
【冒険者の仲間】
- キムリル:ハーパーエージェントの代表にしてプラチナの師。彼女の突然の死が冒険のはじまりで、彼女の真の死が終局のはじまりであった。そして、ジャーラックスルに二度目の死を与えられた。
- トラム:ハーパーのNo.2。キムリルを崇拝に近い気持ちで愛していた。その次に妹のセリスを愛していた。しかし。彼の愛する女たちは死んでしまった。
- ダンフィールド隊長:ヘルム砦の隊長。幾多の戦いを経て構築された“幻王”アシュタールの支持者。
- アリサーラ・カラム評議長:ヘルム砦の評議長。コアミアのパープルドラゴンナイト出身。幾多の戦いを経て構築された“幻王”アシュタールの支持者。
【ダカルト卿の勢力】
- ダカルト・ネヴァレンバー卿:野心家で強欲で、そして能力あるネヴァーウィンター市の現在の統治者。キムリルの死から始まった一連の事件で、ネヴァーウィンター市の実質的支配者の地位を磐石にした。
故郷ウォーターディープから参集した陣営幹部を労う祝勝会の場にて、陣営幹部の大部分を失っている。実行犯のアーロン・ブレードシェイパーはアシュタールと懇意にしていることをモルダイ・ヴェルから聞き、アシュタールに懸賞金をかけた。
【その他の勢力】
- メリサラ・ウィンターホワイト:ベアトリスの姉。ネヴァーウィンター森におけるエラドリンの拠点、ニュー・シャランダーの指導者を務めるフェイ・ナイト。アシュタールたちにはニュー・シャランダーの危機を救ってもらった借りがある。
- モルダイ・ヴェル:ティーフリングの大商人でネヴァーウィンターの政治経済に多大な影響力を持つ。ダカルト・ネヴァレンバー卿を暗黒道へと誘導するアシュマダイの指導者であった。第22話「ある卑劣漢の死」にて死亡。
- ファヴリア:ドワーフの暗殺者。モルダイ・ヴェルの子飼いである。実はドワーフ文明の極みとされるデルザウンの首都ゴーントルグリムの王族の末裔であった。デルザウンは滅びており、幼少期に辛酸を舐めながら暗殺家業を務めている。冒険者たちに敗れ、モルダイ・ヴェルによって殺害された。
- アーロン・ブレードシェイパー:反政府組織アラゴンダーの息子たちの指導者。死鼠団の拷問の末ワーラットとなった。千の顔の家で治療中であったが、正気を失った状態でダカルト卿の前に現れ、毒によってダカルト卿の支持者を皆殺しにして逃亡した。彼をそう仕向けたのはモルダイ・ヴェルの甘言であった。
- ジャーラックスル:ドラウの傭兵団ブレガン・ドゥエイアゼの団長。
ダカルト卿から、“幻王”アシュタールの有力支持者の暗殺を依頼され、この物語に参加し、事態を動かしていたハーパー・キムリルを殺した。
オープニング:ダカルト・ネヴァレンバー
かつて絢爛たる権力の巣窟であった正義の館。度重なる戦によって荒れ果てた居城においてなお、ダカルト・ネヴァレンバーは奇妙な充実感を感じていた。
ネヴァーウィンター市。北方の宝石とも呼ばれる地において、統治者となり得るものはダカルト以外にも大勢いた。しかし多く者が命を落とし、今現在で生き残っている統治者はダカルトとアシュタールのみとなった。
ネヴァーウィンター・ノーブルのアシュタール。ウォーターディープ出身でありながら政治力と野心でのし上がったダカルト・ネヴァレンバー。対極的な生き方ながらも、生き残ったもの同士の奇妙な共感はある。しかし、それよりも高揚が勝る。あれほど渇望しながら手に入れることのできなかったネヴァーウィンターの玉座とエラドリンの伴侶が手に入ろうとしているのだ。ここで奮闘せずしてなんになる。
ダカルトが配下のものに告げる。
「我が方の優位は明白だ。アシュタールの軍を正面から迎え撃ち、力の差を見せ付けて勝利する。諸君らの健闘を期待する」
オープニング:集結
アシュタールの軍はヘルム砦に集まっていた。
軍はさまざまな出自の者たちの混成部隊だ。ダンフィールド隊長配下のヘルム砦の守護隊、ヘルム砦に匿われていた呪痕持ち、反政府勢力“アラゴンダーの息子たち”から合流したならず者たちなどから構成されている。ドラゴリッチとのヘルム砦防衛戦など死線を潜ってきたものたちであるが、装備と数はウォーターディープの正規軍であるダカルト・ネヴァレンバーの軍とは比較にならない。
ダンフィールド隊長「ダメだ。圧倒的に数が足りない。4倍の数の正規軍を相手に戦争などできるわけがない」
アリサーラ議長「個々の力なら勝機があります。また、ダカルト卿にはアシュタール殿をこの手で討ち取りたいといった思いが働くはず。軍を陽動に使い、アシュタール殿にダカルト卿を討ち取っていただく作戦しかありません」
共に死線を潜ったヘルム砦の軍の力自体は信頼できる。ただ、味方の軍を捨石にする作戦がとれるものか…。その時、森が蠢いた。ニュー・シャランダーのフェイと樹人族の軍勢がこの地に駆けつけたのだ。先頭にいるのは一角獣に跨るフェイ・ナイト、ベアトリスの姉であるメリサラ・ウィンターホワイト。
メリサラ「古き盟約と私たちの恩義に沿ってアシュタール殿を支援しにきた。我らを軍営に加えてほしい」
ニュー・シャランダーのフェイたちを加え、アシュタールの陣営は整った。正面からダカルト卿の軍を撃破することは難しいが、作戦を遂行するに十分である。
ミドル:アーロンとダンフィールド隊長、そしてアシュタール
最後の夜、アシュタールはヘルム砦でアーロン・ブレードシェイパーと話していた。
アーロン「エラドリンの薬草が効いた。もう身体は問題ない。明日は俺も前線に出る。もし生き残ったらネヴァーウィンター市の復興に尽力するぜ。ただ、気をつけろ。ダカルトの野郎は今までと様子が違う。何かが噛み合ったという感じがする」
ダンフィールド隊長「同感だ。あの野郎、俗物の野心家と思っていたら化けやがった。時勢と意志が一致した奴はとたんに強敵になる」
アーロン「誰もがお前に会って変わったんだよ、アシュタール。俺も、ダンフィールド隊長も、ダカルトの野郎も」
アシュタール「変わったのは私も一緒だ」
アーロン「生きて帰ったらアンタの密偵になるのも面白いかもな。やり方はギルタークの旦那を真似て。こんな身体になっちまったが、逆に言えばどこにでも入り込める」
アーロンは身体の一部をワーラット化しておどける。ダンフィールド隊長が豪快に笑う。不安を抱えながらも未来を語り、そして夜が更けた。
ミドル:メリサラとベアトリス
同時刻、エラドリンの軍営にてベアトリスは姉のメリサラと話していた。
メリサラ「私たちは恩義に沿ってアシュタール殿につくことを決めた。でもベアトはいいの?貴方は二人の英雄のうちどちらを選ぶこともできたのに」
ベアトリス「構わない。ネヴァーウィンター市民が求めるのはアシュタールだ。土地のことはこの地に住むものが決めるものだ。北方の地に身を寄せ合う我らにとっても、拡大派のダカルトより、アシュタールの方が付き合いやすい。ただ、どちらも死なせたくない。これは欲深い望みなのだろうか」
メリサラ「そうとも限りませんよ。いずれにせよ、私は貴方の判断を信じます」
ミドル:ジャーラックスルとプラチナ
同時刻、ヘルム砦の独房の前にプラチナがいる。独房の中にいるのはブレガン・ドゥエイアゼ団長、ジャーラックスル。プラチナは独房の鍵を開けジャーラックスルを解放する。
プラチナ「行け。どこへなりとも逃げるがいい」
ジャーラックスル「キムリルを殺した俺が憎くないのか」
プラチナ「だからだ。ボクは囚人を殺すことなんてできない。この戦いが終わったら貴方を見つけて、公平な条件で勝負する」
ジャーラックスルはやれやれと肩を竦めた。
ジャーラックスル「了解。……なんでアンタがアシュタールを支持しているのかわからないな」
プラチナ「アシュタールはいい奴だよ」
ジャーラックスル「キムリルは悪辣な女だった。何度寝首をかかれかけたことか。だが、そのキムリルですらアンタの事は大事に思っていた。気持ちはわかるよ、アンタはいい奴だ」
プラチナ「うるさい!この戦いが終わったらお前の首を取ってやる。それまで、どこへなりとも行くがいい!」
プラチナは怒ってその場を立ち去った。ジャーラックスルは肩を竦めると闇の中へと消えていった。
ミドル:ザルビンとギルターク
同時刻、ヘルム砦の暗がりの中でギルタークは黙考していた。
ギルターク「俺は強くなった。前の戦いでは十全に力を発揮できた。今なら妹をこの短剣の標的とすることも可能かもしれない。ただ、アシュタールとダカルト、どちらが勝つにせよ戦いは明日には終わる。それまでは仲間たちの勝利の方が優先だ」
暗がりにブレガン・ドゥエイアゼの同僚、ザルビンが現れる。
ザルビン「ボスから伝令だ。この戦が終わったらメンゾベランザンに帰還する。大仕事だ。次はお前の短剣はあるべき標的を射抜け、だってさ」
気の利くボスと同僚だ。
ギルターク「この仕事が終わったらか」
ザルビン「お前変わったな。生き延びろよ。ボスのことは任せろ」
ギルタークは背中で手を振り、了承の意を伝えた。
遭遇1:ネヴァーウィンターの戦い
かくして、ネヴァーウィンター市の城壁を境に両軍は相対した。揃いの鎧に身を包んだウォーターディープの正規軍と不揃いの格好のヘルム砦混成軍。ウォーホルンが鳴り響き正規軍が進軍を始め、ダンフィールド隊長の率いるヘルム砦防衛隊が受け止める。
両軍がもみ合う中を切りひらき、アシュタールたちは城壁を駆け上る。ウォーハウンドとウォーターディープ正規軍の防衛網を突破し、アシュタールたちは正義の館へ駆けていく。
遭遇2:最終戦
アシュタールたちは見知ったネヴァーウィンター市の裏道を使い尽くし、正義の館へとたどり着いた。
防衛兵「敵襲!」
正義の館の執務室では光り輝く軍装を纏ったダカルト・ネヴァレンバー卿が部下たちを鼓舞する。
ダカルト「今この時が歴史の分岐点だ。退役した後、諸君らがネヴァレンバー王と共に戦ったことを自慢するまたとない機会だぞ」
気勢十分。ダカルト卿の軍勢は正義の館へと侵入したアシュタールたちを迎え撃つ。
ダカルト「始めようか、友よ」
遭遇は正義の館に裏門から侵入したアシュタールたちと、防衛側の全戦力が左端の部屋で全力でぶつかる様相となった。共に大将であるアシュタールとダカルト卿に攻撃を集中させる。制御役のプラチナが幻影の壁で敵勢力の集中を断ち、ベアトリスが攻撃を引き付ける。冒険者たちはギルタークをはじめ攻撃をダカルト卿に集中させ勝利をつかんだ。
エンディングフェイズ:決着
乱戦の中でダカルト卿がアシュタールに問うた。
ダカルト「アシュタール、お前は民をどこに連れて行くつもりか」
アシュタール「それは民の決めることだ」
アシュタールの斧槍に続いて、ギルタークの追撃がダカルト卿に膝をつかせた。アシュタールは斧槍を止めた。
アシュタール「勝敗はついた」
ダカルト「敗れた者の命を取らぬのか」
アシュタール「責任を取るものがいなければならない。それが嫌ならば自ら命を断つがいい」
アシュタールはダカルトを捕らえ短刀を渡す。先ほどまでと打って変わって狼狽した表情を見せると、アシュタールの配下に連れられていった。ダカルトは生来生き汚い人間だ。自ら命を絶つことは今後ともなかった。
エンディングフェイズ2:戴冠
ネヴァーウィンターの戦いはアシュタールの勝利で終わった。数日後、アシュタールは主だった者を正義の館の広間に集めた。
アシュタール「ネヴァーウィンター王となることを望むものはいるか」
主だった者らは王にはならないと口々に言う。
アーロン「俺には資格がない。影から王に仕えるさ」
メリサラ「私たちは森の住民です。ただ、我々との協定を継続して守ってくれる者を望みます」
ベアトリス「姉と同じく」
ダンフィールド隊長「俺は軍人だ。王じゃない」
アリサーラ議長「私は政治家です。専制君主にはなりません」
プラチナ「ハーパーは表に出るものじゃないよ」
ザルビン「ギルタークがやればいいんじゃないの?なんだかんだで毛並みがいいし」
ギルターク「俺は故郷に帰る」
アシュタールは言う。
アシュタール「ならば王とならせてもらおう」
皆は安堵する。アシュタールが王にならねば困るのは共通の思いだった。
トームの司祭が来て略式であるが戴冠の儀式を行う。
司祭「神とアラゴンダーの名の下に汝アシュタールをネヴァーウィンター王と認める」
遠く鐘の音が響き、アシュタールと仲間たちにネヴァーウィンター九勇士の墓で出会った女騎士からの祝福の声が聞こえた。あの悲しげな騎士もこの結末に安堵したのだろうか。
エンディングフェイズ2:沙汰
王となったアシュタールはダカルト・ネヴァレンバーに沙汰を下した。
アシュタール「ダカルト・ネヴァレンバーはネヴァーウィンター市における財産の一切の権利を放棄し、ネヴァーウィンター市から追放とする。死の門をくぐるまでこの地に帰ることを禁ずる」
故郷であるウォーターディープも正規軍を私的に利用し敗北したダカルト卿に温情のある対応はしないだろう。命を奪わない以上温情のある沙汰と言えるが、同時にダカルト・ネヴァレンバーの政治的な死を意味していた。
ダカルト「そうか。私は追放となるのか。ならば友としてネヴァーウィンター市の外から君に忠誠を誓おう。私は生涯、ネヴァーウィンター市に入ることなく、君を外部から支援する」
こうして、ダカルト・ネヴァレンバーは追放され、ネヴァーウィンター市の政治的な混乱は終息した。アシュタールは数十年にわたってネヴァーウィンター市を統治し、次の世代へと引き継いでいく。後世の歴史書において、ネヴァーウィンター市は最も発展をした期間となった。
エンディングフェイズ3:それぞれの結末
アリサーラ議長:新生ネヴァーウィンター市で長く議長を務めた。
ダンフィールド隊長:新生ネヴァーウィンター市で将軍となった。アシュタールとは長く酒を飲む友であった。
トラム:キムリルを失った復讐心に囚われ、闘争の世界へと消えていった。
アーロン:新生ネヴァーウィンター市において、アシュタールの密偵として彼を生涯にわたって守った。
メリサラ・ウィンターホワイト:指導者としてニュー・シャランダーを守った。新生ネヴァーウィンター市とニュー・シャランダーの盟約は長きにわたって守られた。
ジャーラックスル:ブレガンドゥエイアゼの隊長としてメンゾベランザンに帰還し、第4位のヴァーリン家を滅ぼすための暗闘で活躍した。
ザルビン:アンダーダークにおけるデス・ジャイアント討伐戦で死亡するまで、ギルタークの友であった。
ダカルト・ネヴァレンバー:ネヴァーウィンター市の追放後、海路でウォーターディープに帰還する途中で船が沈没し消息を絶った。死体は上がらず、死んだとも南方の彼方の地で領主となったとも言われている。
エンディングフェイズ4:ギルターク・ヴァーリン
ギルタークはメンゾベランザンへ帰還する際、アシュタールに挨拶をした。
ギルターク「世話になったな。別れの時だ、もはや幻王ではないアシュタールよ」
アシュタール「最初の戦いを覚えているか。お前だけ逃げるだなんてとんでもない奴だと思ったが、お前はすごい奴だったよ」
ギルターク「……さらばだ。もはや二人の道が交わることはないだろう」
ネヴァーウィンター市を出たギルタークにザルビンが接触した。
ザルビン「挨拶は終わったのか。気持ちのいい奴らだったな」
ギルターク「あれが仲間というものかと思い知ったよ」
ザルビン「よく覚えておけ。これから俺たちが行くのはメンゾベランザンだ。謀略と裏切りの嵐で仲間と呼べる奴なんていやしない」
そして数年後、メンゾベランザンで第4位となるまで成長したヴァーリン家の館がブレガンドゥエイアゼの襲撃を燃え落ちた。そこには胸に短剣を突き立てられ、絶命したヴァーリン家の女主人がいた。その短剣にはヴァーリン家の紋章が刻まれていたという。
エンディングフェイズ5:プラチナ
千の顔の家。かつてハーパーの拠点であった酒場の上階にて、プラチナはキムリルの遺品を整理している。そこで見つけた魔法のオルゴールを動かすとキムリルからのメッセージが再生された。一度きりの魔法。
キムリル「プラチナ。ついに言ってあげることはできなかったけれど、貴方は私の娘だった。これを聞いているということは、私は貴方に最後まで伝えることができなかったようだけれど、プラチナ、復讐は不要よ。貴方の幸せをただ願っているわ」
階下から旅装束のトラムが上ってくる。
トラム「そうだ。お前に復讐などさせない。俺の魂は砕け散ってしまったが、お前にはまだ守るものがあるだろう」
プラチナ「そうだね。ボクはもう暫くこの街にいるよ。変わっていくこの街を見届けないと」
トラムは去り、プラチナはネヴァーウィンター市に留まった。ジャーラックスルへの復讐はひとまずおいておいて、今はこの街が変わる様を見届ける。そしてまた冒険に旅立とう。
エンディングフェイズ6:ベアトリス・ウィンターホワイト
数十年後、異国の領主の屋敷にて、かつてダカルト・ネヴァレンバーと名乗っていた老人は死亡した。彼は難破船から救助されてこの地にたどり着き、数十年前をかけて己の才覚のみで領主へと成り上がった。そして、この地を南方の宝石と呼ばれる一大通商地へと成長させた。彼の死は街を大いに悲しませたが、後々まで名君として称えることで街の者は彼に感謝を示した。
ダカルトの魂が幽界においてその身体から自由になったとき、別れたときと変わらない外見のベアトリスが現れた。
ベアトリス「本当に死の門を潜るまで戻らないとは、頑固者だな」
ダカルト「我輩は有言実行の男だ。そしていかなるときでもアシュタールに負けるわけにはいかないのだ」
ベアトリス「本当に変わらないな。永い時を生きるには寄る辺となる同伴者が必要だ。今のネヴァーウィンター市や北方世界を共に回るのも一興だ」
ダカルト「フェイの同伴者というわけか」
ベアトリス「そういうことだ。墜落都市ジンナレル、滅亡したドワーフ文明の遺産ゴーントルグリム、灼熱の中に存在する遥かな存在。探索する領域はいくらでも残っているのだから」
ベアトリスとダカルトは北方世界に転移し、かつてないほど発展したネヴァーウィンター市を目の当たりにする。
エンディングフェイズ7:ネヴァーウィンター
数十年後、アシュタール王の統治下でネヴァーウィンター市はかつてないほどの発展を遂げた。そして、アシュタール元王は後続に統治を移譲し、汚れた老いぼれドワーフ亭に通いつめる毎日であった。
閉店間際の汚れた老いぼれドワーフ亭でアシュタールはまどろんでいる。
店員「もう閉店だから、お帰りですよ」
店主「その方はいいんだ。お客様、最後の酒は何にしますか。ダンフィールド隊長が気に入っていたお酒にしましょうか」
店主は酒を注ぎ、片付けを終えると店を閉める。そしてアシュタールに鍵を預けて退出した。
吟遊詩人「もう閉店ですか」
そこにはプラチナに似た面影を宿すフェアリーを連れた吟遊詩人がいた。
アシュタール「まだやっていますよ。そこのフェアリー、プラチナという人を知っているか?」
フェアリー「おじいちゃんですよ。何か関係が?」
アシュタール「彼とは昔一緒に冒険をしていてね。ああ、あの時はギルタークとベアトリスという仲間もいた。古い話だが、聞いてくれるか」
吟遊詩人「構いませんよ。一晩ここに居させてくれるなら」
アシュタール「ならば思い出語りをさせてもらおう。北方の宝石と呼ばれるこの街にも辛い時代はあった。これはその最後の時代の話だ」
老アシュタールは自らが体験した物語を吟遊詩人に語った。吟遊詩人はこれを歌に残し、ネヴァーウィンターの伝説として人々に長く愛されることとなる。
これにてキャンペーン完了です。
おつかれさまでした!