緋ニッキ

東京近郊のTRPGプレイヤー緋のブログ。トーキョーNOVA THE AXLERATIONのシナリオ、ダブルクロス等のダイスアプリ、Skypeオンセのノウハウ等を公開しています。

ネヴァーウィンター・キャンペーン 第22話「ある卑劣漢の死」

黒野さんDMのD&D 4th ネヴァーウィンター・キャンペーンの22話です。残る組織はアシュマダイとダカルト卿。キャンペーン最終回まで後1回です。

あらすじ

ドワーフの暗殺者ファヴリアの口は堅い。しかし、彼女の雇い主が彼女を裏切ったことを知った今際の際に真実は語られた。

モルダイ・ヴェル。ダカルト卿の傍にいるティーフリングの商人。彼こそがネヴァーウィンターを激動に落とし込んだ一連の陰謀の首謀者である。彼はソードコースト沿岸一帯に自らの望む世界を構築するため、ダカルト卿を影から操ろうとしている。そして、これを実行するため、ついに地獄の第九層の支配者アスモデウスの軍勢を呼び寄せた。

冒険者たちは本当の真実をつきとめ事態を解決するため、モルダイ・ヴェルの館へと向かった。

ネヴァーウィンターキャンペーン第22話『ある卑劣漢の死』

 

パーティー

各キャラクターの詳細は割愛。

  • アシュタール/指揮役(アーデント) PL:夏瀬さん
    壮年の男性。ネヴァーウィンターの正統な後継者となった。
  • プラチナ/制御役(ブレードダンサー) PL:はたはたさん
    ピクシーの少女。テーマはハーパー・エージェント。
  • ベアトリス・ウィンターホワイト/防衛役(ソードメイジ) PL:緋
    エラドリンの女騎士。テーマはイリヤンブルーエンのフェイ。ダカルト卿に命の借りがある。
  • ギルターク・ヴァーリン/撃破役(ローグ) PL:妖くん
    ドラウの傭兵団員。敵対していた妹が家督を継ぎ、ブレガン・ドゥエイアゼと敵対的な関係にある。テーマはブレガン・ドゥエイアゼ・スパイ。

その他の登場人物

【冒険者の仲間】

  • キムリル:ハーパーエージェントの代表にしてプラチナの師。彼女の突然の死が冒険のはじまりで、彼女の真の死が終局のはじまりであった。そして、ジャーラックスルに二度目の死を与えられた。
  • トラム:ハーパーのNo.2。キムリルを崇拝に近い気持ちで愛していた。その次に妹のセリスを愛していた。しかし。彼の愛する女たちは死んでしまった。
  • ダンフィールド隊長:ヘルム砦の隊長。幾多の戦いを経て構築された“幻王”アシュタールの支持者。
  • アリサーラ・カラム評議長:ヘルム砦の評議長。コアミアのパープルドラゴンナイト出身。幾多の戦いを経て構築された“幻王”アシュタールの支持者。

【ダカルト卿の勢力】

  • ダカルト・ネヴァレンバー卿:野心家で強欲で、そして能力あるネヴァーウィンター市の現在の統治者。キムリルの死から始まった一連の事件で、ネヴァーウィンター市の実質的支配者の地位を磐石にした。
    故郷ウォーターディープから参集した陣営幹部を労う祝勝会の場にて、陣営幹部の大部分を失っている。実行犯のアーロン・ブレードシェイパーはアシュタールと懇意にしていることをモルダイ・ヴェルから聞き、アシュタールに懸賞金をかけた。

【その他の勢力】

  • モルダイ・ヴェル:ティーフリングの大商人でネヴァーウィンターの政治経済に多大な影響力を持つ。ダカルト・ネヴァレンバー卿を暗黒道へと誘導するアシュマダイの指導者であることは秘せられている。
  • ファヴリア:ドワーフの暗殺者。モルダイ・ヴェルの子飼いである。実はドワーフ文明の極みとされるデルザウンの首都ゴーントルグリムの王族の末裔であった。デルザウンは滅びており、幼少期に辛酸を舐めながら暗殺家業を務めている。冒険者たちに敗れ、トラムに拷問を受けているが口を割っていない。
  • アーロン・ブレードシェイパー:反政府組織アラゴンダーの息子たちの指導者。死鼠団の拷問の末ワーラットとなった。千の顔の家で治療中であったが、正気を失った状態でダカルト卿の前に現れ、毒によってダカルト卿の支持者を皆殺しにして逃亡した。彼をそう仕向けたのはモルダイ・ヴェルの甘言であった。
  • ジャーラックスル:ドラウの傭兵団ブレガン・ドゥエイアゼの団長。
    ダカルト卿から、“幻王”アシュタールの有力支持者の暗殺を依頼され、この物語に参加し、事態を動かしていたハーパー・キムリルを殺した。

オープニング:地獄の門が開いた

モルダイ・ヴェルの館の地下区画にあるアシュマダイ(悪魔崇拝者)の施設。アシュマダイの信徒が生贄となる少年、少女たちを次々と殺していく。ただの一度も成功しなかった儀式だが、今ここに絶望的な奇跡が起こった。

闇よりも暗い扉が現れ、そして地獄の第九層との門が開く。内部からは大量の巨大な蠅が群れを成して現れ、残る生贄と信徒を覆いつくしていく。その様子をモルダイ・ヴェルが笑顔で見下ろしている。蠅はアスモデウスの使徒でありモルダイ・ヴェルにとっては神の使徒と同義である。

蠅の群れは無数に門から現れる。モルダイ・ヴェル以外のすべての人間を覆いつくすと、窓を突き破ってネヴァーウィンター市全域を覆い尽くした。

オープニング:本当の真実

怒れるハーパー、トラムの拷問は常軌を逸したものであったが、ファヴリアは暗殺者の矜持にかけて情報を口にしなかった。彼女の口を割り真の黒幕を割り出さなければ、ダカルト卿とアシュタールの対立は決定的なものとなる。ネヴァーウィンター市を二人の王による先の見えない統治状況になりかねない。

ダンフィールド隊長「ダメだ。誰が黒幕かなど特定できるわけがない。言えるのはこれだけだ」

①そいつは決して表に出ない

②ダカルト卿の傍に出入りできる地位にある

③そいつは莫大な財力を持っている。

みなの心に思い当たるものが一人いたが、口には出せなかった。モルダイ・ヴェル。ダカルト卿とつながりを持つ、この街の中枢に近い商人。うかつに彼に手を出したら、ダカルト卿との和解の機会を失うことになりかねない。

そのとき、ネヴァーウィンター市を覆っていた蠅の軍隊が冒険者たちのいる廃屋に突進してきた。蠅は冒険者たちを無視して、一直線にファヴリアを覆いつくす。そして、それまで一言も口を聞くことのなかったファヴリアが断末魔の悲鳴を上げた。

ファヴリア「ちくしょう。不要になったら口封じかよ。永遠に呪われろ!モルダイ・ヴェル。お前の崇拝する地獄の悪魔に喰われて死んでしまえ・・・」

ファブリアは蠅の群れに押しつぶされて動きを止めた。そして、アーロン・ブレードシェイパーが呟く。

アーロン「モルダイ・ヴェル。そうか。金色の目、死鼠団を紹介したのも、ダカルトの野郎を暗殺するよう言ったのもあいつだった・・・。なぜ俺はこんなことを忘れて?」

自我の崩壊しかけたアーロンをアシュタールが引き戻す。

アシュタール「大丈夫だ。モルダイ・ヴェルには責任を取らせる」

遭遇1:地獄の騎士

そのとき、冒険者たちの廃墟が轟炎に包まれた。嘶きとともに鼻から炎を吹き出す地獄のナイトメアにまたがり、4騎の悪魔騎士が駆けつける。

「我等は終末をもたらす先触れとなった。かつてのネヴァーウィンター・ノーブルの血を引くものアシュタール。爛漫と鏖殺の華と散れ」

4騎の悪魔騎士は地獄の炎を操り、瞬間移動を繰り返しながら攻撃をしかける。加えて、4騎のナイトメアもすべてエネミーデータを持つ。大量の攻撃回数と自在の移動、何よりプラチナが石化魔法に苦しめられるが、冒険者たちは着実に悪魔を撃退し、勝利した。しかし、勝利したところでネヴァーウィンター市の上空は無数の蠅によって、まるで夜にように暗い状況にあった。このままでは都市の命脈が尽きてしまう。

冒険者たちはモルダイ・ヴェルの館へと急いだ。

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遭遇2:モルダイ・ヴェルの館

下水道、ネヴァー城の地下迷宮、裏道を通りぬけ、冒険者たちはモルダイ・ヴェルの館まで来た。蠅によって薄暗くなったネヴァーウィンター市でも、煌びやかに光を放つ富と財の象徴とも言える屋敷であった。ここでは今夜も夜会が催されている。

冒険者たちが館の入り口で主人への面会を求めると、矮躯で青白い爪をした執事が現れて一向に状況を説明した。

執事「主はネヴァーウィンター市の諸貴族様ら来賓をもてなしております。招待状はお持ちですかな」

アシュタール「招待状はこれだ」

アシュタールは武器を抜きはなつと扉を破壊した。

執事「どうしてもというなら進むとよろしかろう。ただ、下男どもの機嫌を損ねようものなら命はありませんぞ」

矮躯の執事は薄笑いを浮かべると闇の中に消えた。

扉の中はふんだんにビロードを用いた豪奢なホールとなっている。2階に続く廊下から嬌声が聞こえており、夜会が催されているのだとわかる。2階に踏み込んだ冒険者たちを下男たちが待ち伏せていた。彼らは一様に動く死体であり、その周りには蠅が飛び回っている。この館でいったい何が起きているのか。

下男たちは細い道に罠を張り、冒険者を転移させながら曲がり角の罠で繰り返し大きなダメージを与え続けてくる。加えて、蠅の軍隊が細い道を縦横無尽に動き回り冒険者たちのHPを削っていく。

本キャンペーンでも屈指の厳しい戦いとなった。突出したギルタークは催事場の目の前まで転移させられ、自身の回復のために動きが取れない。指揮役のアシュタールは罠に動きを止められ、細い道の中心で倒され死亡判定を繰り返している。プラチナは支配魔法を立て続けにかけられて動きがとれない。

催事場の前で這い蹲るギルタークは夜会の賓客である貴族たちの奇異の視線に晒されながら治療を続け、戦線に復帰した。移動阻害を受けにくいエラドリンのベアトリスが瞬間転移で罠の前に移動し、罠を解除し戦線を立て直す。

冒険者たちが己が持つ1日毎パワーの大部分を使い果たす激戦となったが、ダイスロールが味方したこともあり冒険者たちの勝利となった。

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遭遇3:闇の晩餐

夜会ではネヴァーウィンターの有力貴族たちが贅を凝らした料理を食べ、冒険者たちを余興とでも思っているかのようにせせら笑う。館の主であるモルダイ・ヴェルは柔和な表情で冒険者たちに問いただす。

モルダイ・ヴェル「英雄様。わざわざこんなあばら家にどうしていらっしゃったのですか。もちろん歓迎はいたしますが」

ベアトリス「惚けるな。ネヴァーウィンターを混乱に追いやる黒幕め。その薄汚い下から真実を喋らせてやる」

モルダイ・ヴェル「私が何かしましたか?」

ギルターク「それなりに確証を持ってここにきている。お前は悪魔崇拝者だ」

モルダイ・ヴェル「それが何か。問題でも?皆様?」

貴族たちは面白い見世物に喝采を上げている。ただ、何かがおかしい。贅を凝らした料理はいつの間にか蛆虫のたかる腐敗した残飯に変わっていた。着飾っていた黒服、ドレスも腐りはて、貴族たちは蠅のたかる死体へと成り代わっていた。最初からそうであったのか、今こうなったのかは定かではないがただ事ではない。

モルダイ・ヴェル「かつて尊い志を持っていた貴族の末裔であっても、腐敗し、堕落していくことは簡単なことです。英雄であっても堕落を避けられないことは、この街のものなら誰でも知っています。かつてのレディ・アリベスのように」

モルダイ・ヴェル「ダカルト・ネヴァレンヴァー卿であっても同じです。あの方は腐敗と堕落を知っていた。だとしても逃れることはできない。なぜならば、彼に怒りがあるからです。信頼を預けたものたちを、信頼を預けた貴方たちに殺される。貴方たちが生きる限り、ダカルト卿は鉄の規律でネヴァーウィンターを納める鋼鉄の君主であり続けるでしょう。私はそれを見たい。ダカルト卿がソードコースト沿岸に作り上げる千年王国に私の神殿を築きたい」

ベアトリス「悪魔崇拝者め」

モルダイ・ヴェル「我が信ずるは9層地獄の支配者アスモデウス。私はアシュマダイの司祭モルダイ・ヴェル。それは事実ですが何も問題ありません。我々を救う神などいないのですから、悪魔にすがって何が悪いというのか。死になさい」

ギルターク「できないな。お前には」

催事場を舞台に戦闘が始まる。しかし、最速で動いたギルタークはジャーラックスル直伝のナイフ投擲術でナイフを投げ、モルダイ・ヴェルの前衛を守るデーモンスォームを異次元に幽閉する。そして、モルダイ・ヴェルのところに切り込むとアクションポイントを含めて1ターンで200点以上のダメージをたたき出す。これはモルダイ・ヴェルの命を削りきるに十分な攻撃で、戦闘は一瞬で終わった。標的を暗殺する暗殺者の面目躍如たる動きであった。

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エンディングフェイズ1:決別

モルダイ・ヴェルは傷ついた身体を引きずって屋敷から逃げていく。その前に光り輝く鎧に身を包んだダカルト卿の軍勢が立ちはだかる。

モルダイ・ヴェル「ダカルト様お助けください。血が。血が抜けて死んでしまいます」

ダカルト卿はモルダイ・ヴェルに一瞥もくれず、彼を追いかけてきた冒険者たちに声をかける。このことはモルダイ・ヴェルの自尊心を粉々に打ち砕いた。モルダイ・ヴェルはふらつきながら路地裏へと消えていく。

ダカルト卿「このような輩を近づけたのは私の失敗だった。不忠者を誅し、我が目を開いてくれたことに感謝する」

ダカルト・ネヴァレンヴァー。野心に燃え、権力に執着し、それを失うことに怯えていた男。彼は仲間の死を受け入れ、真の原因を見つけてここにきた。そして、天命を自覚したのだ。

ダカルト「私がなるものはかつてのネヴァーウィンター王家の代わりではない。過去の王権など不要な、誰もが認める王だ。ゆえに、余はアシュタールの従属を求める。かつての王権はいらぬ。ただ、この街の民を、羊たちを導くには貴種が必要だ。そしてそれは余の他にいない」

アシュタール「半年前に答えたはずだ。王権がほしくば力で奪ってみろ」

ダカルト「よかろう。後日、我が軍にて力で諸君を従える」

アシュタール「人の国に来て軍だと!どの面下げて言っている。俺は負けんぞ」

ダカルト「我が愛しきベアトリス嬢。貴方は余と共に歩んでくれ」

ベアトリス「いいだろう。ただ、条件がある。私も力を示さなければ承服しない。そして、約束しろ。私たちに負けたら、お前は独りよがりの野心を捨て、私たちと足並みを揃えて歩むんだ。羊だなど、悲しいことを言うな」

ダカルト「わかった。戦場で手荒く扱うことは許してほしい」

ダカルト「ハーパーの少女よ。雌雄は戦場で決するでよいか?」

プラチナ「いいよ。キムリルから始まった運命だから、ボクは今まで共に生きた人たちと最後まで歩む。これだけ争った後に戦うなんて、もう止めてもらうよ」

ダカルト・ネヴァレンヴァーはギルタークを一瞥すると撤退した。彼と暗殺者の間では話し合う必要はない。お互い、どちらの力が上か、それだけの話でしかない。

こうして、ネヴァーウィンター市を二分する二人、アシュタールとダカルト・ネヴァレンバーは袂をわかった。

エンディングフェイズ2:ある卑劣漢の死

ネヴァーウィンター市外を逃げるモルダイ・ヴェルの足に紐付きの矢が突き刺さった。鏃は簡単に抜けないように細工している。紐を持つものは怒れるハーパー、トラムであった。モルダイ・ヴェルは敬愛するアスモデウスがいる9層地獄に一刻も早く魂が解き放たれることを願ったが、その願いが叶うまでには多くの時間を要した。

次回予告:ネヴァーウィンター

 

ダカルト・ネヴァレンヴァーは真の君主となった。天運、命運、地運、そのすべてがダカルトを真なる君主の域にまで押し上げた。一方でアシュタールは冒険の途上で得た多くの仲間を集め、新たなネヴァーウィンターの軍勢を作り上げた。

「我々には運命すら振り向かせる力が必要だ」

「お前はネヴァーウィンターをどこへ導くのだ、アシュタール!」

次回、最終回「ネヴァーウィンター」

長らく続いたこのキャンペーンもついに完結です。