ネヴァーウィンター・キャンペーン 第21話「葬列」
黒野さんDMのD&D 4th ネヴァーウィンター・キャンペーンの21話です。キャンペーン終盤に向けて物語は廻り続けます。
あらすじ
ネヴァーウィンター。冬の来ぬ都と歌われた街に深々と雪が降り積もる。
完全武装の兵団が街路を行進していく。
無人の街路。 点々と続いてきた血の跡。道の中央に飛び散った血飛沫。
その中央にはキムリルの外套が半ば雪に埋もれるように落ちている。
奇妙な蝶の標本の様に。
「幻王アシュタールは守護卿を裏切り、毒を盛った」
守護卿の腹心の多くが犠牲となり、怒りに燃えるネヴァレンバーは正義の名の下に報復と裁きを誓った。 斥候達が街路を駆け、手配書を貼りだしていく。
守護卿の居城は「正義の館」と呼ばれている。そこはかつて正義の神ティアの神殿であった。だが正義が最も求められているこの時、それに耳を傾ける神はいない。ティアは百年も前に死んだ。
今ここにいるのは怒りに燃える男だけだ。
ネヴァーウィンターキャンペーン第21話『葬列』
パーティー
各キャラクターの詳細は割愛。
- アシュタール/指揮役(アーデント) PL:夏瀬さん
壮年の男性。ネヴァーウィンターの正統な後継者となった。 - プラチナ/制御役(ブレードダンサー) PL:はたはたさん
ピクシーの少女。テーマはハーパー・エージェント。 - ベアトリス・ウィンターホワイト/防衛役(ソードメイジ) PL:緋
エラドリンの女騎士。テーマはイリヤンブルーエンのフェイ。ダカルト卿に命の借りがある。 - ギルターク・ヴァーリン/撃破役(ローグ) PL:妖くん
ドラウの傭兵団員。敵対していた妹が家督を継ぎ、ブレガン・ドゥエイアゼと敵対的な関係にある。テーマはブレガン・ドゥエイアゼ・スパイ。
その他の登場人物
【冒険者の仲間】
- キムリル:ハーパーエージェントの代表にしてプラチナの師。彼女の突然の死が冒険のはじまりで、彼女の真の死が終局のはじまりであった。
- トラム:ハーパーのNo.2。キムリルを崇拝に近い気持ちで愛していた。その次に妹のセリスを愛していた。しかし。彼の愛する女たちは死んでしまった。
- セリス:ハーパーの集まるパブ“千の顔の家”の看板娘。ダカルト卿の“幻王”アシュタールへの報復として、千の顔の家が標的とされその際に死亡している。
- ダンフィールド隊長:ヘルム砦の隊長。幾多の戦いを経て構築された“幻王”アシュタールの支持者。
- アリサーラ・カラム評議長:ヘルム砦の評議長。コアミアのパープルドラゴンナイト出身。幾多の戦いを経て構築された“幻王”アシュタールの支持者。
【ダカルト卿の勢力】
- ダカルト・ネヴァレンバー卿:野心家で強欲で、そして能力あるネヴァーウィンター市の現在の統治者。キムリルの死から始まった一連の事件で、ネヴァーウィンター市の実質的支配者の地位を磐石にした。
故郷ウォーターディープから参集した陣営幹部を労う祝勝会の場にて、反政府組織“アラゴンダーの息子たち”の幹部アーロン・ブレードシェイパーに乱入され、強度の強い毒によって、陣営幹部の大部分を失っている。
【その他の勢力】
- モルダイ・ヴェル:ティーフリングの大商人でネヴァーウィンターの政治経済に多大な影響力を持つ。ダカルト・ネヴァレンバー卿を暗黒道へと誘導するアシュマダイの指導者であることは秘せられている。
- ファヴリア:ドワーフの暗殺者。モルダイ・ヴェルの子飼いである。実はドワーフ文明の極みとされるデルザウンの首都ゴーントルグリムの王族の末裔であった。デルザウンは滅びており、幼少期に辛酸を舐めながら暗殺家業を務めている。毒使い。
アシュマダイへはゴーントルグリムの地下大空洞の奥にいるプライムモーディアルを開放する計画で、これによる故郷の開放が彼女の望みであった。 - アーロン・ブレードシェイパー:反政府組織アラゴンダーの息子たちの指導者。死鼠団の拷問の末ワーラットとなった。千の顔の家で治療中であったが、正気を失った状態でダカルト卿の前に現れ、毒によってダカルト卿の支持者を皆殺しにして逃亡した。
- ジャーラックスル:ドラウの傭兵団ブレガン・ドゥエイアゼの団長。フォーゴットンレルムにおいて、ドリッズド・ドゥアーデンと並び称される剣客。
ダカルト卿から、“幻王”アシュタールの有力支持者の暗殺を依頼されている。そして、この物語を動かしていた謎めいた女ハーパー・キムリルは彼の刃によって物語から退場した。
オープニング:情勢の確認
“千の顔の家”襲撃におけるセリスの死、ミンターン傭兵団サビーヌ団長の裏切りにより、冒険者たちはただならぬ状況に陥っていることに気づいた。
深深と雪が降り積もる中、技能チャレンジにて現状を明らかにしていく。
- 正義の館でダカルト・ネヴァレンヴァー卿が襲撃された。犯人の毒でウォーターディープ時代からのダカルト卿幹部の大部分は命を失った。
- 実行犯はアーロン・ブレードシェイパー。何者かに操られているかのごとくおかしな様子であった。クラーケントンネルのアーロンのアジトにて彼が拷問を受けていた痕跡があった。今回、彼は毒殺という手段をとったが、彼にそんな技術はなく冤罪の可能性がある。
- “幻王”アシュタール支持者であるヘルム砦のダンフィールド隊長、アリサーラ議長にもおそらく刺客が向かっている。
- 路地裏でキムリルのものと思わしき外套が見つけられている。
ベアトリス「お前がやったのなら簡単なのだかな」
ギルターク「俺ならば毒などの証拠は残さない」
ベアトリス「言ってみただけだ。実行犯とされているアーロンを保護しなければ、何をでっち上げられてもおかしくない」
冒険者たちはまずアーロンの保護に向かった。
遭遇1:悪魔の暗躍
冒険者が路上で隠れているアーロンと再開したのは小一時間後だった。アーロンは薬物中毒の成果ろれつが回っていないが、やはり彼は主犯ではなかった。
- アーロンを堕落させた悪魔がいる。彼らがきてセリスを殺した。
- その後、ニヤついた金色の目に見据えられるて、記憶が途切れた。おそらく守護卿を暗殺するための指示を打ち込まれている。
その時、地獄から門が開いた。
中から現出したのはアイルデヴィル:ゲルコエと、輿の上に載っている悪魔:マーレグラルクであった。
ゲルコエ「殺したんだろ?アシュタールの命令で、ウォーターディープの将軍たちを」
アーロンの様子がおかしくなっていく。アーロンの精神を破壊したのはこのデヴィルだ。マーレグラルは「どうせ殺すものだと」異種族に興味がない。
戦闘となった。悪魔は強敵ではあるが、数が少ない。冒険者たちは時間はかかったものを着実に悪魔を撃退し、勝利する。
ミドル1:アーロンとの会話
ドラッグの過剰摂取でアーロンの隊長は悪化している。医療施設を確保している場所はヘルム砦くらいしか思いつけないが、ケラル砦責任者であるアリサーラ議長とダンフィールド隊長はアリュタールに組していることが反逆罪にあたるとして、現在投獄中の状態だった。
アーロンは震える声で言う。薬が切れておらず案内などはできそうにない。
アーロン「ダカルト卿を殺せ殺せと多くのものが俺を攻めたれる。やるしかなかったんだ。あれだけ王権をほしいままにしていた簒奪者に鉄槌を下すことができた……いや、そうじゃない。どうして俺はこんなことをしている?」
精神を操り、アーロンに惨劇を実行させた者がいると全員確信を持つことができた。アーロンを安定させて、真実を証言してもらう必要がある。ヘルム砦の治療施設を使用するためにも、ヘルム砦のダンフィールド隊長とアリサーラ議長は救出しておく必要がある。
遭遇2:ジャーラックスル
降り積もる雪の中。
路地裏で冒険者たちとジャーラックスルは遭遇した。ジャーラックスルはドラウの傭兵団ブレガン・ドゥエイアゼの団長にして、ドリッズド・ドゥアーデンと並び称される剣客であり。今まで対峙してきた中で最強の敵である。
そして彼の傍らにはドラウの女性2名がいる。かしづいていないことから、ドリッズドと同等以上に高貴な方だと推測できる。
ジャーラックスル「君たちならあの二人を確保するため、ここを通ると思っていたよ」
ジャーラックスル洒脱な服を抱えて大笑いする。
ギルタール「……妹の差し金ですか」
ドラウの女性「その通りだよ。ギルタークの役立たず。この年齢となるまで養ってやったとのに。恩を仇で返すなんてしないわよね?できればこのまま死んで?」
ジャーラックスル「妹ぎみはお怒りだ。ここで始末させてもらう」
敵に反射の高いドラウが多く火力不足に難を抱えながら、敵構成にフレイムジャイアントデータを用いていることから、プロテクション(火)の防御を貫けない。結果としてギルタークが一人ずつ敵を片付けて言っている。ジャーラックスルもまた単独で戦い続けられる能力を持っている。
ジャーラックスル「俺は殺したやつの武器を蒐集するのが趣味でね。たとえば、このソングブレード、非常に使い勝手がいい。持ち主の女は手ごわかったから、やっぱり俺は強いからね」
プラチナ「何だと!後で覚えていろよ!」
ギルターク「ところで、団長。アンタが死んだら団はどうなる?」
ジャーラックスル「俺は死なない。仮に死んだとしてもヘビの頭が摩り替わるだけだろう」
戦いは続き、最終的にギルタークが勝利した。
ギルターク「ここまでだ。ジャーラックスル」
ジャーラックスル「そうだな。まいったよ」
ギルターク「ビジネスの話さ。俺たちと手を組めないか」
ジャーラックスル「俺は勝ち馬にしか乗らない。だから必ず最後に立っている奴の側に立つんだ。ウォーターディープではダカルトの勝ちだったが、ここはわからないな」
ジャーラックスルは傍らにいるハーパー、プラチナに話しかける。
ジャーラックスル「キムリルは尊敬できる同業者だった。だから、躊躇わなかった。油断したらこちらがやられるからな。死体は十字区画のあたりにあるはずだ。必要なら回収するといい」
プラチナ「お前に殺されたことに変わりはないよ。後で決闘を申し込む」
ジャーラックスルは自らの身体についた埃を払うと、ギルタークに投げナイフの投擲術のコツを教え(1日毎特技)、去っていった。
ミドルフェイズ2:アリサーラ評議長とダンフィールド隊長
アリサーラ評議長とダンフィールド隊長は、ネヴァーウィンター市で軟禁されていた。彼らと経緯を共有する。
アリサーラ「守護卿は疑心暗鬼に陥っている。腹心たちを失った悲しみをすぐに説得できるものでもないだろう。ヘルム砦での軍の再編などやることは山積みです」
ダンフィールドはアーロンを尋問しようとする。しかし、彼は錯乱しており、話を聞くには時間が必要だ。
アーロン「……ネヴァーウィンターの王権は尊い血のものが行うべきだ。しかし、どうして俺はあんなことを、どうやって?金の目の指示で。しかし、何を指示されたのか……」
ダンフィールド「ち。いずれにせよ、我らは誓った。アシュタール。ネヴァーウィンターの真の盟主とともに戦うと。彼のみはヘルム砦で預かり、できる限りの医療は行うおう」
ダンフィード隊長らはアーロンを連れて退出した。
ベアトリス「ではどうする。我々もヘルム砦にいくか、それとも」
ギルターク「裏で糸を引いている奴をつきとめることが先だ。今しかチャンスはない」
ミドルフェイズ3:二度目にして永遠の死
雪降るネヴァーウィンター市。ジャーラックスルの指定した十字区画にキムリルのものと思わしき血まみれの外套が落ちている。血痕は近くの小屋の中まで続いている。
中には血に塗れたトラムがキムリルの亡骸を抱えていた。
トラム「キムリルは死んだ。俺は大事なものを3度も失ってしまった。キムリルの最初の死、妹のセリスの死、そしてキムリルの二度目の死だ」
プラチナ「ジャーラックスル、あいつはボクが倒すよ」
トラム「お前たち姉妹は嫉妬するほど仲がいいな。キムリルも死んだってのにこんなに良い顔をしている。プラチナ、正直に言うと俺はお前に嫉妬していた。キムリルはお前のために命をかけていた。こんな目にあっても満足そうに」
プラチナ「ジャーラックスルも手足に過ぎない。守護卿に依頼されて動いているだけ。だから裏に何がいるかを調べないといけない」
トラム「わかっている。どんな手段をとっても真犯人を突き止めてやる」
トラムは憎しみに深く沈んだ表情で告げた。
遭遇3:ファヴリア
ダンフィールドらと別れた冒険者たちの前にフレイムジャイアントの傭兵たちを連れたドワーフの女暗殺者ファヴリアが登場する。
ファヴリア「そろそろアンタらも用済みさ」
ギルターク「お前たちの目的はなんだ」
ファヴリア「ダカルト様の為さ。嘘かどうかお悩み中かい?」
ギルターク「嘘だな。真実をどうやって聞き出すのかに悩むだけだ」
戦闘が始まる。フレイムジャイアントらは強敵であったが、プラチナのプロテクションfrom火によってダメージは激減していた。ファヴリアの猛毒弓に注意しつつ、冒険者たちは攻撃にリソースを集め、巨人たちの高いHPを削りきった。
エンディングフェイズ:本当の真実を得るために
血と共に体力を使い果たしたファヴリアは大声でわめく。
ファヴリア「エラドリン。自分たちと高貴だと勘違いしている奴ら。ベアトリス、お前のことだよ。アタシだってゴーントルグリムの王族の末裔だった。でも、故郷は破壊しつくされ、汚泥を啜ってこんな生き方しかできなくなった。アタシはお前たちが羨ましくて憎たらしい」
ベアトリス「故郷を悼む気持ちはわかる。だが、我々は誇りはだけは失わない」
ファヴリア「それが甘いってんだよ。エラドリンのお姫様。アタシが本当のことを言わなければ、アンタらの冒険もここまでさ。本当の真実にたどり着ける奴なんていない。高貴なお姫様に拷問なんてできやしないだろ?」
ベアトリス「それは……」
ベアトリスに拷問はできない。しかし、冒険者の後ろには幽鬼のような男が立っていた。“千の顔の家”にいたハーパーのNo.2トラム。彼はファヴリアの持っていた毒矢装填済みのクロスボウと斧を持っている。
トラム「そのドワーフ女を俺に渡せ。どんな手を使ってでも聞き出してやる」
トラムはキムリルとセリスを失い、暗黒面に落ちている。引き渡したのならファヴリアがどんな目にあうのかは自明だ。それでも、真実から逃げるわけにはいかない。
ベアトリスはトラムにファヴリアを引き渡す。
トラムはファヴリアを受け取ると、ハーパーの隠れ家のひとつへの姿と消した。
扉が閉じ、物語はまた終局へと近づいていく。
次回へ続く!