緋ニッキ

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ネヴァーウィンター・キャンペーン 第20話「陰謀、しかるのち惨劇。当然の帰結」

黒野さんDMのD&D 4th ネヴァーウィンター・キャンペーンの20話です。20回も遊び続けられる世界の奥深さと、コミュニティのいい感じのゆるさが最高です。

あらすじ

死竜は滅ぼされた。

恐るべきリッチは倒れた。その経箱は砕かれ、欠片はフォートナウ火山の火口に捨てられた。
サーイの侵略は退けられた。少なくとも当面の間は。
残ったのは一つの都市、一つの玉座に二人の王。


守護卿は会談を提案する。
提示された驚愕の条件。
幻王は受けるのか、断るのか。

そして暗闇に隠れていた恐るべき策謀が今、ネヴァーウィンターに牙を剥く。

ネヴァーウィンターキャンペーン 第20話

『陰謀、しかるのち惨劇。当然の帰結』

――伝説はしばしば悲劇を伴う。

パーティー

各キャラクターの詳細は割愛。

  • アシュタール/指揮役(アーデント) PL:夏瀬さん
    壮年の男性。ネヴァーウィンターの正統な後継者となった。
  • プラチナ/制御役(ブレードダンサー) PL:はたはたさん
    ピクシーの少女。テーマはハーパー・エージェント。
  • ベアトリス・ウィンターホワイト/防衛役(ソードメイジ) PL:緋
    エラドリンの女騎士。テーマはイリヤンブルーエンのフェイ。ダカルト卿に命の借りがある。
  • ギルターク・ヴァーリン/撃破役(ローグ) PL:妖くん
    ドラウの傭兵団員。敵対していた妹が家督を継ぎ、ブレガン・ドゥエイアゼと敵対的な関係にある。テーマはブレガン・ドゥエイアゼ・スパイ。

その他の登場人物

【冒険者の仲間】

  • キムリル:ハーパーエージェントの代表にしてプラチナの師。殺されたにも関わらず生きている謎の女性。彼女の突然の死が冒険のはじまりであった。
  • ダンフィールド隊長:ヘルム砦の隊長。狙撃された傷が治りきっていない。
  • アリサーラ・カラム評議長:ヘルム砦の評議長。コアミアのパープルドラゴンナイト出身。

【ダカルト卿の勢力】

  • ダカルト・ネヴァレンバー卿:ウォーターディープの公開ロード。野心家で強欲で、そして能力あるネヴァーウィンター市の現在の統治者。
  • サビーヌ将軍:ミンターン傭兵団の団長。ダカルト卿の腹心。厳格な性格。ダカルト卿を愛している。 

【その他の勢力】

  • モルダイ・ヴェル:ティーフリングの大商人でネヴァーウィンターの政治経済に多大な影響力を持つ。アシュマダイの指導者であることは秘せられている。
  • ファヴリア:ドワーフの暗殺者。モルダイ・ヴェルの子飼いである。
  • アーロン・ブレードシェイパー:反政府組織アラゴンダーの息子たちの指導者。アラゴンダーの息子たちに入り込んだ死鼠団によって誘拐され、拷問の末ワーラットとなった。千の顔の家にて治療されている。
  • ジャーラックスル:ドラウの傭兵団ブレガン・ドゥエイアゼの団長。フォーゴットンレルムにおいて、ドリッズド・ドゥアーデンと並び称される剣客。

オープニング:会談

【背景】

“鎖に繋がれし巨竜”ロラガウスの襲撃から始まった死の国サーイとの戦争に勝利したネヴァーウィンター市の主だったものは、正義の館の敷地内に築かれたダカルト卿の天幕に集まった。この会談はダカルト卿により設けられたものだ。ネヴァーウィンターの統治について提案がある、と。

戦争における最大の功労者はアシュタールと仲間たちである。彼らはヘルム砦の戦闘でロウガラス・カリキリファクスといった強大なドラゴリッチと、ザス・タムの腹心であるヴァリンドラ・シャドウマントルを討ち取った。加えて、アシュタールはネヴァーウィンター王家の正当なる後継者だ。しかし、ネヴァーウィンター市の実質的な統治と治安はダカルト卿と彼がウォーターディープから呼び寄せた精鋭たちによって保たれている。

アシュタールとダカルト卿がネヴァーウィンターの支配者を望む限り、争いは避けられない。この会談に今後のネヴァーウィンター市の行方が懸かっていた。

【やり取り】

ダカルト卿「アシュタール。私と君は異なる道を歩んできた。そしてこれからも同じ道を歩むことはないと確信している。ただ、この地の安寧とお互いの目的を果たすために最適な提案をお持ちした」

ダカルト卿「まず、私の目的の話をしよう。私には野心がある。英雄をアラゴンダーを失い穏やかに滅びつつあるこの北方を立て直すことで、私の能力を証明し、名誉と権力を欲しいままにする野心だ。そのためにこの地を北方を繋ぐ一大商圏の中心地に育てたいと考えている。武力ではなく、財の力によってこの北方の宝石、ネヴァーウィンターに新たな灯を灯したい」

ダカルト卿「率直に言う、未来の王アシュタール。お前の力は戦いでこそ発揮されるものだ。そして私と私の優秀なスタッフはこの上なく有能な官僚だ。血統と権威はお前が持ち、実権は私が持つ。それが今後のネヴァーウィンターのあるべき姿だろう」

ダカルト卿「プラチナ。君たちハーパーはネザリル帝国の侵略に立ち向かうために立ち上がった優秀な革命家だ。しかし、ネヴァーウィンター市が安定した統治下にあればネザリル帝国の影響は受けない。君たちが真に救うべき圧政に苦しむ民はネヴァーウィンターの外にこそいるだろう。私は君たちの戦いを支援する用意がある」

プラチナ「ネヴァーウィンター市が真に平和になるなら、たしかにボクたちの出番はないね」

ダカルト卿「そして、ネヴァーウィンター市の安寧に腕のいい密偵は必要だ。ギルターク、君を雇いたい」

ギルターク「ブレガン・ドゥエイアゼに追われている暗殺者の雇用主となると」

ダカルト卿「君の家庭の事情は理解している。ただし、君が追われているのは君が単独でいるからだ。この地に確かな後援者がいるとなれば、話は別だ」

ギルターク「損はないな」

ダカルト卿「ベアトリス、君と私はよきパートナーになれる。イリヤンブルーエンの姫君とネヴァーウィンターの統治者の婚儀は新しいネヴァーウィンターのあり方示すよきエピソードとなるだろう。もちろん、私は本心から君を愛している」

ベアトリス「本心は認める。この地に安寧をもたらすために良き隣人となることにも同感する。貴方が私の愛を得るためには永き時を生きる必要があるだろうがね」

アシュタール「答える前にひとつ聞きたい。お前にとってこの国は何か」

ダカルト卿「野望を叶えるための城だ。今はまだ完全ではないかもしれないが、戦いのために必要なものだ」

アシュタール「この共同体がもっと良くなる為にお前の力は必要だ。お前の申し出を受けよう」

この状況に導いたキムリルも、アリサーラ議長もアシュタールの決定に異を述べることはなかった。この合意を祝い、ダカルト卿の酒蔵から酒が供され、絢爛たる宴となった。

アシュタールとダカルト卿を中心とした人の輪をティーフリングの商人モルダル・ヴェイは哀切の篭った目で見つめていた。この光景は二度と見ることのない貴重なものであることを彼は確信していたのだ。

ミドル1:そして、惨劇

ダカルト卿は守護卿区、正義の館に戻りウォーターディープから呼び寄せた腹心らを労う宴を催した。

ダカルト卿は民衆への政治的配慮から、この地に同行させる軍事力を私兵であるミンターン傭兵団に限定していた。図らずもサーイとの戦争により、本国から腹心らを呼び寄せる機会を得た。これで、この地に磐石の態勢を築けるようになる。アシュタールとの権力闘争は長期的視野に立てば勝利したも同然だった。

ダカルト卿「ネヴァーウィンター王家の地を継ぎ、理想家と現実家の視野を持つ、アシュタールは得がたい同盟者だ。漸く、私がこの地に立つ城が築けた。これまでの諸君らの尽力に感謝する」

ダカルトを幼少期から見守ってきた老少ら、ダカルトを心から支えてきた者たちが一斉に杯をあおる。そして、俄かに苦しみ始めた。最大限の苦しみを与えて殺害する無味無臭の毒薬。ダカルトの腹心たちは断末魔の苦しみの中で力尽きていく。

正義の館の窓枠から血走った目のワーラットが進入し、ダカルトたちに遅いかかる。包帯でぐるぐる巻きにされたその顔はアーロン・ブレードシェイパーのものだった。

アーロン「アラゴンダーの血統でないものがネヴァーウィンターを治めるなんて認めねえ」

毒に苦しむ腹心らが剣を取りアーロンと戦って殺されていく。ダカルトの顔は怒りによって蒼白なものとなった。誰がこの状況を作ったのか。死鼠団によって誘拐されたアーロンを救い出したのが何者だったのか。心当たりがあったからだ。

ミドル2:セリスの死

“千の顔の家”に戻った冒険者たちは、荒事に手馴れた暗殺者が侵入していることに気づいた。血溜りの中で、酒場の看板娘であり、ハーパーとのつなぎ役でもあったエルフの娘セリスが死んでいる。セリスを取り囲むように4人暗殺者たちが武器を構えた。そのうち一人は明らかに神話級の領域(22レベル)に入っている。明らかに冒険者たちを皆殺しにしようといった構えだ。

とはいえ、冒険者たちは強大なドラコリッチすらも打ち倒した実力者だ。暗殺者は1ターン目にギルタークをデスレイまで追い込むが、脆弱な防御をつかれ打ち倒された。

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ミドルフェイズ2:サビーヌ将軍

プラチナがセリスの目を閉じる。アーロンを治療していた部屋は血の跡のみが残っており、不在である。冒険者たちが状況を確認したタイミングで、ミンターン傭兵団の団長であるサビーヌ将軍と彼女の軍勢が登場する。彼女は怒りによって蒼白な表情をしていた。

サビーヌ「ダカルト様が襲撃され、閣下の大切なものたちの多くが亡くなった。当局はアーロン・ブレードシェイパーを容疑者としてみている。アーロンを出せ」

ギルターク「アーロンはいない。どこかに消えた。ただ、ここで語り合っても結論はでないな」

サビーヌ「閣下に申し開きをしてもらおう。ついてこい」

とは言うものの、サビーヌは人気のない廃墟に冒険者を誘導する。

サビーヌ「どこから毒を持ち込んだ、暗殺者ども。あのような非道な手段を用いた奴らを閣下に会わせるわけにはいかない。一人残さず殺せ」

廃墟に隠されていたウォーターディープのウォーマシンらが起動する。サビーヌ隊長、アイアンゴーレム、石製の人体破砕機などと戦闘となったが、石製の人体破砕機の行動を制御役のプラチナが継続的に縛り、冒険者たちが戦力差を維持したまま勝利する。

最期の走馬灯で真相に辿り着いたサビーヌ隊長は、真実を冒険者に告げようとしたが命脈が持たなかった。

サビーヌ「私も、お前たちも奴らに踊らされていたということか……。アシュマ……ダイ……」

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エンディングフェイズ:陰謀、当然の帰結

正義の館において、ダカルト卿はサビーヌ隊長の遺体が廃墟にて見つかった報告を受けた。彼女の護衛につけたウォーマシンは冒険者らの特技によって破壊されており、誰と戦ったのかは明らかだ。怒りに震え、ダカルト・ネヴァレンバーは叫んだ。

ダカルト卿「アシュタール、この裏切りの代償は高くつくぞ!」

同時刻、千の顔の家の襲撃からからくも生き延びた冒険者の仲間たち――キムリル、アリサーラ議長、ダンウッド隊長、トラムらの前に大きな羽飾りのついた帽子をつけたドラウの男が現れた。

彼は洒脱な様子で帽子を脱ぐと、もったいぶった様子で頭を下げる。

羽飾りの男「ミス・キムリル、やっと貴方を見つけることができた」

キムリル「自己紹介くらいはしたらどう、色男さん?名前くらいは聞いてあげるわ」

キムリルの手から投擲されたナイフが男の外套を貫く。しかし、男はキムリルの背後に神速で回り込むと彼女の肩を抱いて言った。

ジャーラックスル「私の名前はジャーラックスル。ミス・キムリル。さよならだ」

ドラウの傭兵団、ブレガン・ドゥエイアゼの団長ジャーラックスル。ギルターク・ヴァーリンの元上司。フォーゴットンレルム最高の剣客ドリッズド・ドゥアーデンと並び称される男。彼の手から銀光がたなびき、キムリルは二度目の死を迎えた。

次回へ続く!