緋ニッキ

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グランクレスト・「七つの大罪」 キャンペーン本編 第6話「その望み、誰がために(後編)」

夏瀬さんGMのグランクレスト・キャンペーン第6話後編です。

北方にて神と崇められるメサイア、七大公“怠惰の”グラッチ・イジェメックの侵略を撃退したラオグスト。しかし、グラッチを信奉するイジェメック領の士気は高く、このままではタウラージ領に再び侵攻し、総力戦となることは避けられない。

ラオグストはタウラージ領を守るため、イジェメック領への侵攻を決めた。

グランクレスト戦記 第6話「その望み、誰がために(後編)」

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■初期設定・パーティー

初期設定、各キャラクターの詳細は下記参照。

  • “憤怒の騎士”ラオグスト・タウラージ ロード/キャバリアー PL:粥さん

    壮年の男性。悪逆なるセヴン・シン帝国から独立を宣言し、七大公ドライゼ領をも手中に収めた。

  • バシリオ・シスラエール アーティスト/ドラゴン PL:しのさん
    シスラエール最後の竜。ラオグストに命を救われ、彼の戦士となることを誓う。ラオグストの妻子の安寧を願っている。

  • エリザベス・バートリー  メイジ/サイキック PL:緋
    バートリー商会の武器商人。ラオグストをセブン・シン帝国への反乱へと誘う。

  • 艦長 投影体/オルガノン PL:黒野さん
    混沌を駆逐するために建造された超時空戦艦のAI。エリザベスとの契約に基づきラオグストを支援する。今回は都合によりお休み。

オープニング1:前回までのあらすじ

北方にて神と崇められるメサイア、七大公“怠惰の”グラッチ・イジェメックを撃退し、イジェメック領の将軍であるイスマとサイを捕らえることに成功した。有能な将軍を失ったグラッチは自国へと退却し、身を隠した。

しかし、イジェメック領の民は「隠れている神が再び現れれば戦火は終わる」と、再度の侵攻の構えを見せた。

オープニング2:ドミナスの朝は質素である

帝国宰相ドミナスの朝食は質素である。盛大に行うことにより権勢を示す夕食とは違う。朝食は頭の回転を維持するために必要最小限の糖分だけ取ればよい。この朝にもたらされたグラッチの敗北の報告についても、事前に糖分を摂っていたから解決策を見出すことができた。

プレッシン「グラッチ公がタウラージ領にてラオグスト公に敗北いたしました」

グラッチの野心は帝国の磐石を揺るがしかねない懸案であった。イジェメック領がグラッチへの信仰に支えられた国家であるからこそ、この先の展開は御しやすい。

ドミナス「イジェメック領に帝国本国の支援部隊を送る。帝国領が攻められているのだから当然のことだ。戦線を一時支えられる程度でよい。ラオグストがグラッチを討ってくれた方が都合がよい」

プレッシン「帝国本国が介入する口実となりますな」

ドミナスは腹心の回答に満足そうに頷く。

ドミナス「召喚魔術師ヘカートを呼び、部隊の支援をさせろ。奴のほしがりそうな伝説はくれてやる」

ヘカート。小柄な老境に差し掛かった伝説を蒐集する風変わりなメイジ。伝説を集め、使いこなすことに興味を持つ変わり者。ヘカートの召喚する怪物はラオグストへの適度な脅威となるはずだ。

オープニング3:“邪眼”グライフ・アルティナス

グライフ・アルティナス。エーラムの魔法師協会直属の魔法師。政治的介入の通告など、協会の意向を直接伝える、あるいは実行するために派遣される者。両の瞳を布にて封印しているのは、ひとたびその瞳が開かれれば大陸最大とも言われる魔力を露になってしてしまうためという。そのグライフがエリザベスに通告に訪問した。

グライフは協会の意向を伝えた。エリザベスのタウラージ領への干渉が帝国の政治的バランスを崩していると協会は考えている。エーラムに出頭しなければ、アカデミーサポートの一部を封鎖するものであると。エリザベスは満足げに笑うと告げた。

「お断りだ。私は帝国の天秤の根元をへし折るためにここにいる。貴方の来訪は私の行動に対して“正解だ”と教えてくれているようなものだよ」

グライフはその答えを了解していたかの如く頷くと姿を消した。

封鎖されたアカデミーサポートは専属部隊5、先端医療技術3、電撃戦術1であった。

オープニング4:ケリー

訓練長に同僚のケリーが絞られている。ケリーは隊長となり、部隊をまとめるようになった。しかし、自分だけではなく他人の命を預かることに不安を隠せない様子だ。その感情をバシリオに吐露する。

ケリー「戦場には悪魔がいるんだよ。何が起こるかわからない。隊がうまくついてこれなければ、全滅してしまうかも」

バシリオ「僕だって怖いよ。でも、それは相手も同じだ。戦争なのだから。だから僕は自分が信じるもののために戦う」

ケリー「バシリオさんは相手の国のことも考えて戦っているんですね。お、オレがもっと強くなるには、例えば邪紋を手に入れるにはどうすれば・・・」

バシリオ「シスラエールが滅びた日、父の混沌を貰った。苦しい時間の中で遠くから女の人の声がして、気がついたらこうなっていたよ」

ケリー「辛かったんですね。オレも覚悟が決まったら、邪紋を手に入れてみます」

ケリーもまた戦う理由を持っている。バシリオにできるのは彼女を死なせないように見守ることだけだ。

オープニング5:流星

ラオグストの息子フィリオは生まれたばかりの仔馬に夢中だ。

フィリオ「名前を決めたいんだ。シュバルツブルーメ、メテオール、ミルヒシュトラーゼ、トラウム、ファイルヒェン、ソンネンブルーメ・・・」

ラオグスト「牡馬に花の名前はどうだろう。キルシェ・ブリューテは桜の花という意味を意味する東の国の言葉だ。この国には自生していないが、牝馬に相応しい綺麗な名だよ」

フィリオ「なら、メテオールにするよ。流星ってかっこいいだろう」

フィリオが大人になった後、いつかメテオールとも別れる日が来るだろう。しかし、彼らの絆はそう簡単には切れないものとなりそうだ。フィリオはきっといい騎士となる。

ミドル:イジェメック領への侵攻

宰相のフィネガンを中心にして、イジェメック領への侵攻作戦が提案された。イジェメック領の民は「隠れている神が再び現れれば戦火は終わる」と高い戦意を保っている。態勢を取り直して総出で再進行された場合、総力戦となりタウラージ領も無事にはすまない。イジェメック領の問題は今対処するほかない。

しかし、グラッチ・イジェメックは領地の中に身を隠し、どこにいるとも知れない。ラオグストたちは情報を精査し、侵攻作戦の前提を固めた。

【侵攻作戦の前提】

  • グラッチ・イジェメックは領地の中に身を隠している。場所はグラッチの領地にほど近い村の中だ。
  • イジェメック領も混乱しており、山賊が徘徊している。山賊が村に到達した場合は村は破壊される。
  • 帝国が支援部隊を動かしている。兵数は少なく霧の中に隠れている。しかし、巨人や見たこともない巨大兵器などただ事ではない陣容となっている。異世界のことを知る召喚師などが背後にいるであろう。
  • イジェメック領の戦意を確実に折るには、すべての城と砦を陥落させるか、全滅させる必要がある。城や砦の陥落には、当該オブジェクトの破壊と占領行為(メジャーアクション)が必要となる。
  • 隠された勝利条件はあり、一定の条件を満たすと戦争は終わる。

これを踏まえ、ラオグストは全員に命じる。

ラオグスト「イジェメック領はわが領地となる。未来の領民に手を出すことは認めぬ。グラッチ公、兵士、軍事施設以外の領民はこれを守れ」

エリザベス「君の領民を戦地に送り、それでもイジェメック領の民を守れと言うんだね?」

ラオグスト「領主の責務だ」

エリザベス「貫けるものか、見届けさせてもらうよ」

かくて、ラオグストたちは敵軍の大部分を占める民兵への攻撃を行わない条件で戦場に赴いた。

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クライマックス:イジェメック領での戦い

艦長の持つレーダーによってグラッチの配置場所が判明した。

グラッチはイジェメック城の近郊にある村で、山賊と戦っている。隠れていれば広大な領地の中で見つけることは困難であったが、表に出てきて戦ったら場所は分かってしまう。一度戦い敗れたラオグストたちを前にして、国民を守る行動を取ったのは永世者特有の命知らずか、信仰を寄せる国民を守りたいという自らの意志に身を委ねたせいか。自由を失ったグラッチに取れる策はない。しかし、国民が信仰を寄せる以上は最後まで戦うという意志が感じ取れる。

イジェメック領の民兵に呼応するように帝国軍も動いた。ラオグストたちの右翼に展開し、城壁のような大きさの巨人、見慣れぬ兵器を従えている。見慣れぬ兵器は異星技術によって構築されており、魂魄はエリザベスと敵対して闇の中に消えた“トゥーラアームズ”ドナートの遺骸から召喚術師ヘカートが取り出したものだ。

ラオグストたちは右翼の帝国軍から攻略し、強力な身体を手に入れたドナートからの砲撃に苦しめられるが、バシリオがよく守りこれを撃退した。続いて左翼の軍隊長を撃破してグラッチに攻撃を集中させる。

グラッチは前線に立ち自らを回復させながら戦うが、20レベルとなったラオグストたちの攻撃は凌げなかった。攻撃が集中するとPCたちの攻撃に加えて、静動魔法によりピンポイント攻撃となる攻城兵器によって削りきられた。

グラッチを討ち、砦と城を全て落とし、山賊を討伐する。マップの大部分が民兵に埋められ、移動困難な状態となりながらもラオグストたちは勝利した。

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エンディング:信徒の行方

戦乱の終結後、ラオグストはグラッチを信奉するイジェメック領の将軍イズマとサイガと面会した。

イズマ「何ゆえ、イジェメック領の民を守ったのですか」

ラオグスト「未来の、そして今の我が領民であるからだ。諸君らの農具は武器を握るためのものではない。イジェメック領から糧を得るために用いるものだ」

サイガ「オレたちはグラッチ様を今でも神だと思っている。しかし、教義によって殉死はできない。神が死んだとして、信仰を曲げることなどできないんだ。殺してくれ」

ラオグスト「生死を我々に委託するな!命尽きるまで思いのままに生きればよい。グラッチのように。復讐を望むなら、このラオグスト、いつでも受けて立つ」

イズマ「武人なのですな。我らは生きる目的が見出せないだけだ。貴方を討つ理由もまたない」

サイガ「生きろって牢から出すと?」

ラオグスト「監視はつけるが、自分の食い扶持は自分で稼いでもらおう」

イズマ「わかりました。我らは自らの判断でこの地に留まる。グラッチ殿の弔いはしたいが、構わないかね?」

ラオグスト「思いのまま生きろと言った。・・・私の子も思いのままに生きているよ。生まれたばかりの仔馬に名をつけると意気込んでいた。貴方たちにも思いのままに生きてほしい」

イズマ「その仔馬の名は決まったのですか?」

ラオグスト「メテオールと言う」

サイガ「許されるなら、巡礼が終わったら見に行くよ。それくらいいいだろ?」

バシリオ「僕が見守っているから、構わないよ」

イズマとサイガはイジェメック領へと戻った。イジェメック領は信仰する神を失ったことに悲しんだが、グラッチが民を守るために戦って死んだこと、その後の領主となるラオグストが領民を殺さず、山賊から保護したことは衆目の知るところであった。

後に人口の1割程度がラオグストへの憎しみを捨てきれずに去ったが、多くの者は信仰を保ったままイジェメック領に戻った。ラオグストによる統治が進んだ未来においてもイジェメック領の信仰は失われることはなかったが、強硬な反乱などは起きることはなかった。

エンディング:フィネガンの進言

フィネガンはいつにも深い苦悩の皺を寄せて言った。

フィネガン「領土が広がり、安定はしています。しかし、これを治められる領主が不足しています。ついては、審査を通った新しき領主を推挙します」

喧嘩による負傷か、顔に青あざを作ったアベルが入室した。ドライゼ領の旧領主ドライゼの嫡子。彼はフィネガンらの領主候補審査に不満を持った若い騎士たちと喧嘩をした後だと言う。ラオグストを悪く言うのは許せないと。その若い騎士たちの表情はドライゼを失った直後のアベルと似たものであったと察しはする。

ラオグスト「取るに足らない者らに絡むな」

アベル「王を愚弄するものが許せないだけです」

フィネガン「タランの街を任せたいのですが」

ラオグスト「いいだろう。暫くはグレイスをつけよう」

アベルは一礼をして退出する。

ラオグスト「次は帝国本体か、他の君主か。他の七大公は動くだろうか」

フィネガン「アイオン、ベルムと閣下の関係は悪くありません。あとは商売と魔法にしか興味を持たぬ方々。率先して攻めて来るとは思えません」

ならば、つかの間とは言え平和が来るのだろうか。そのとき、桜の花びらが領主の館に舞い込んできた。エリザベスがタランの街に設立した特区に東方の商人が桜を植樹したという話は聞いている。

ラオグスト「桜の季節だな」

次回へ続く!