グランクレスト・「七つの大罪」 キャンペーン本編 第3話「その歩み、誰がために~前篇~」
夏瀬さんGMのグランクレスト・キャンペーン第3話です。
キシコール・フォレストの戦いを経てセブン・シン帝国皇帝へ納める資源(森:20)を獲得したラオグスト・タージ。彼は皇帝陛下の意思を確かめるために自らの手で資材を帝都に送ることにした。
今回は腐敗しているセブン・シン帝国の領内で資源を運搬する話です。帝国内部は広く移動の話だけで何話も作れるような濃密なものでした。
■初期設定・パーティー
初期設定、各キャラクターの詳細は下記参照。
-
“憤怒の騎士”ラオグスト・タウラージ ロード/キャバリアー PL:粥さん
壮年の男性。タランの街を宵闇の魔神から救った領主。皇帝の意思を探るために帝都への出兵(資源の運搬)を決意する。
-
バシリオ・シスラエール アーティスト/ドラゴン PL:しのさん
シスラエール最後の竜。ラオグストに命を救われ、彼の戦士となることを誓う。ラオグストの妻子の安寧を願っている。 -
エリザベス・バートリー メイジ/サイキック PL:緋
バートリー商会の武器商人。ラオグストをセブン・シン帝国への反乱へと誘う。 -
艦長 投影体/オルガノン PL:黒野さん
混沌を駆逐するために建造された超時空戦艦のAI。エリザベスとの契約に基づきラオグストを支援する。
前回までのあらすじ
宝物庫を満たす財を蒐集することにしか興味がないと噂され、支配地域を圧迫するセブン・シン帝国皇帝。タランの街の領主、ラオグスト・タージは皇帝の意思を確認するために、自らが集めた資源を皇帝に直接献上することを決めた。
今回予告
ラオグストは自らの意志で納めるべき資源を届ける任を負った。
帝都までの道のりは決して楽ではない。
数人で旅ならいざ知らず、軍なのだ。その費用は甚大である。
だが、そうまでしなければならぬ真の目的が、あるのだ。
皇帝直轄の道中には三つの領土と三人の君主。
ラオグスト軍は献上資源と共に帝都を目指す。
グランクレストキャンペーン第二部
三話
「その歩み、誰がために~前篇~」
混沌(カオス)を治め、聖印(クレスト)に至れ。
オープニング:帝都への道のり
バートリー商会のJ・ロウライトが示した地図を元に帝都への資材の搬送を決めたラオグストたちは帝都への移動する経路を相談していた。
外周部にあるタランの街から、セブン・シン帝国中央への移動となるため周辺諸国からの干渉はないと予想されるが、経路上の領主は曲者ぞろいだ。さらに帝都へ運ぶ資源1につき、重量8(総重量160)もの資源を運搬しなければならない。
ラオグストたちは資源の配置と移動経路を定め、帝都へと移動を開始する。
- デリーズル男爵:辺境地域と帝都の一部を守護する。若くして実戦経験豊富だが、中央からの資金の提供が少なく、配下の騎士の武装は旧式である。
- ウェブリー子爵:辺境地域と帝都の緩衝地帯を守護する。浪費家で支配地域で飢餓が発生しているにも関わらず重税を強いる。しかし、初代皇帝の縁戚であり、意見できるものは少ない。
- マクミラン伯爵:帝都周辺を守護する。皇帝の遊び仲間で派手好き、女好きの遊び人。半裸の女性をはべらし、気に入った者にはすべてを与えるという。支配地域に混沌災害が多数発生しているが、長く軍を派遣していない。
ミドル1:デリーズル領
ラオグストの領地を出て帝都へと向かう。デリーズル領に差し掛かったあたりで、山賊が襲来する。重武器の技能判定を行い、ラオグストが山賊を撃退する。
J・ロウライト「辺境地域の治安は悪化しています。治安維持が行き届いていないという噂ですが……」
行軍を進めるラオグストたちの前にデリーズル家の紋章が立ちはだかった。単騎(弱体化状態)でラオグストがデリーズル家のフラッグの下へと移動する。
ラオグスト「ラオグスト・タウラージである。デリーズル殿はおられるか」
デリーズル男爵「お初にお目にかかる。わが領内で行軍を見たので様子を見に来たのだが、単騎でこちらに来る貴方を見て敵ではないと確信できた」
デリーズル男爵は支配地域に入った軍を区別なく確かめ、敵となれば即撃退をする“急先鋒”と呼ばれている。軍としてぶつかればただでは済まない相手だが、単騎で赴いたことにより、良い印象を与えたようだ。
ただ、デリーズル男爵の実績のわりに指揮する軍の装備は旧式のものが多かった。
デリーズル男爵「予算の配分がおかしいのです。前線には装備を維持する予算も割り当てられない。ときおり考えるのです。この国に忠義を尽くす価値があるでしょうか」
ラオグスト「忠義を尽くす価値があるかは人それぞれだろう。私はそれを確かめるために帝都へ行くのだ。この国の根が腐っていたとして、諫言をしないことこそ忠義にもとると気づかされた。周りに誰のための忠義であるか、問いただす者が多くてな」
デリーズル男爵「得がたいことです。帝都へお行きなさい。ただ、ウェブリー子爵とマクミラン伯爵には気をつけた方がいい。彼らは自らのことしか考えていない」
デリーズル男爵は彼らの領地のことを知らせた。ウェブリー領は飢餓、マクミラン領は混沌災害に悩まされているが、領主は何も行動せず、民が苦しんでいる。
バシリオや彼の軍にいる男装の少女ケリーが民を救うべきだと言うが、ラオグストはこの地は自らの領地ではないため、帝都へ向かうことが最優先だと言う。
J・ロウライト「領主が私腹を肥やしているということなら、噂はあります。関所を通るたびに通行料というか、表沙汰にならない中抜きがあるとか」
本当かと問うラオグストにエリザベスと艦長が答える。
エリザベス「君が見てきたものがこの国のすべてだよ」
艦長「腐敗した国家権力に立ち向かう方法は二つある。自らも腐敗するか、圧倒的な暴力だよ。君はどちらを選択することもできる」
ラオグスト「皇帝陛下の意思を確かめるまで選択することはできない」
艦長「君は善人だよ」
ラオグストたちはデリーズル男爵の部隊から補給を受け、旅路を急ぐ。
ミドル2:レッドウィンド義賊団
レッドウィンド義賊団は赤い外套をまとった愛すべき悪漢たちだ。殺さず、犯さず、貧しいものからは何も奪わない。腐敗した貴族や、強欲な金持ちから奪った宝物を食料などに換えて貧民たちへと配っている。ウェブリー領の領民たちは、レッドウィンド義賊団を慕って通報などをしないことから、彼らは権力にとらわれずに隠れ住むことができていた。
それも飢餓によって領民が枯れ果てるまでの話だ。飢餓に苦しむ領民たちの怒りは、帝国へと向かいウェブリー領では軍への襲撃が相次いでいた。
土砂降りの雨(士気-1d6)の中、細く長い谷を移動中のラオグストたちにレッドウィンド義賊団が襲いかかる。レッドウィンドは周辺国一の弓使いとされるマロー将軍と互角と称される弓の使い手。かつ、森に潜んでいる限り常にダメージを50点軽減する。そして、行動値を落とす攻撃を多用し、行動値が低い相手には大ダメージを与えてくる。
レッドウィンド義賊団の集中攻撃を受け、味方を庇ったバシリオが大ダメージを受けたが、ラオグストたちの火力の前にレッドウィンド義賊団は半壊した。
ミドル3:レッドウィンド
捕らえられたレッドウィンドはラオグストに帝国に従うつもりはない言い放ち、首を差し出した。ここで殺せば第二、第三のレッドウィンドが現れるだろう。
レッドウィンド「オレたちからすべてを奪った帝国軍と話すことなんてない。殺せ!」
ラオグスト「痴れ者が!残された民はどうするのか」
ラオグストはレッドウィンドを憤怒の表情で睨み付ける。
ラオグスト「圧制に苦しむものを見ている者はお前たちだけではないのだ。デリーズル男爵のように民を思う者はいる。我々もだ。お前のように帝国から物資を奪ったところで、帝国は他の者から奪うだけだ」
聞く耳を持ったレッドウィンドはラオグストに問いただす。
レッドウィンド「ならばどうするんだ?」
ラオグスト「われらは皇帝陛下に意見を賜りに行く。そして真意を確認する。お前は生きろ」
ラオグストはレッドウィンドの縄を斬る。
レッドウィンド「本気か?死ぬぞ」
バシリオ「死なせない。ボクらがいる」
レッドウィンドは諦めたように笑い、バシリオに言う。
レッドウィンド「お前のことは知っているよ、シスラエールの最後の竜。オレたちの符丁をやる。この首が欲しくなったら会いにきなよ」
レッドウィンドは立ち去った。ラオグストたちは軍を再編し、行軍を続ける。
ミドル4:ウェブリー子爵
ウェブリー領の伝令により、ラオグストたちの軍は砦の外に待機させられた。雨の中でラオグストたちを立ち往生させて消耗させる目算だったようだが、エリザベスの魔法“シェルター・プロジェクション”により、軍を休ませることができた。
ラオグストたちは身なりを整え、ウェブリー子爵と会食をする。ウェブリー子爵は領民から搾取した財で肥え太った男だった。
ウェブリー子爵「お役目ご苦労、ラオグストどの。辺境に行かれてさぞご苦労をされたことでしょう。この地でゆっくりとお休みください」
ラオグスト「こちらまでの道行きで飢饉に苦しむ民を見ました。ご好意はどうぞ民の方に」
ウェブリー子爵「今年は不作でしたか。ならば来年は豊作になりますな。そんなことより、食事が冷めてしまいますよ。そんなことを気にするのは貴種たる我々の仕事ではない。ところで、あなた方は木材を運搬しているとか。通行の許可を出すためにはそれなりのモノを出していただく必要がありますな」
ラオグスト「何を言っているのか、皆目検討もつかない」
ウェブリー子爵「森林を10納めるか、レッドウィンドの首をお持ちいただきたい」
ウェブリー子爵との交渉は判定で行い、成功した。
ラオグスト「それはできない。レッドウィンドの一団と交戦したが、首領は我が信念に従い開放した。首領のレッドウィンドに貴方の領地で略奪をしないことを誓約させることならできなくもない」
エリザベスがウェブリー子爵に囁く。
エリザベス「憤怒の公であるラオグスト殿をあまり怒らせない方がいい。彼の憤怒は貴方の身を滅ぼして余りあるのだから」
ウェブリー子爵「わかった。誓約書を持ってくれば通行を許可しよう」
レッドウィンドは立ち去った。ラオグストたちは軍を再編し、行軍を続ける。
ミドル5:マクミラン伯爵
帝都を前にマクミラン伯爵の伝令により、ラオグストの軍は再び足止めをされていた。半裸の女性たちを付き従えた色男、マクミラン伯爵がラオグストに面会を求めた。
マクミラン伯爵「ここを通れば陛下のお膝元となる。しばらくお待ちいただきたい」
ラオグスト「しばらくとはいつまでか」
マクミラン伯爵「貴方しだいだ。我が領地は混沌災害に悩まされている。後は配下の者に言うがよい」
マクミラン伯爵に紹介された仮面の魔術師グーリは、怪しげな風体だが誠実そうな声で混沌災害の概要を説明する。
グーリ「混沌災害はヘリオンクラウドと呼ばれる神出鬼没の魔境だ。その魔境には無数の怪物が棲み、イヴィルゲイザーと呼ばれる百眼の魔物が統率している。彼らは人目につかないように移動し、村落を滅ぼしては消失する。彼らを滅ぼし、そしてその魔境に取り込まれた人物の情報を私に教えて欲しい」
エリザベス「場所がわかれば対処はできるということだね」
エリザベスは“ロケートオブジェクト”の魔法を使い、首魁であるイヴィルゲイザーの居場所を特定する。
エリザベス「王都への道の途中だ。グーリ、貴方の目的はわからないが、通行証を発行してもらう方法が他にないからには仕方がないね。私たちと共にくるといい」
クライマックス:邪視する者
魔境に踏み込んだラオグストたちはイヴィルゲイザーの元にたどり着いた。イヴィルゲイザーの周辺にはヘリオンクラウドと名乗る怪物たちが群れをなしている。
イヴィルゲイザーは視線により自動的にバッドステータスを与える能力と、バッドステータスを持つ者に強力な攻撃(視線の射線にいる者に300点以上のダメージ)をしてくる。ヘリオンクラウドも規模は小さいがバッドステータスを与えてくる。
しかし、イヴィルゲイザーをラオグストが硬直させると、バシリオが足止めをしている間に、艦長とエリザベスの射撃攻撃がすべての敵を滅ぼした。
エンディング:開門
帝都へとたどり着いたラオグストはこれまでの道筋で得たすべての通行証を提示した。そして、帝都の巨大な門が開く。腐敗した帝国の中枢、魑魅魍魎の棲む帝都にて、待ち受けるものとは何か。ラオグストの妻子は無事なのか?
次回へ続く!