ネヴァーウィンター・キャンペーン 第13話「動静」
黒野さんDMのD&D 4th ネヴァーウィンター・キャンペーンの13話です。
混乱するネヴァーウィンター市において、事件の核心に迫る話の続きです。今回もすべてのイベントはこなせなかったため、伝説級となり次回に続くことに。
パーティー
各キャラクターの詳細は割愛。
- アシュタール/指揮役(アーデント) PL:夏瀬さん
壮年の男性。テーマはネヴァーウィンター・ノーブル。 - プラチナ/制御役(ブレードダンサー) PL:はたはたさん
ピクシーの少女。テーマはハーパー・エージェント。 - ベアトリス・ウィンターホワイト/防衛役(ソードメイジ) PL:緋
エラドリンの女騎士。テーマはイリヤンブルーエンのフェイ。 - ギルターク・ヴァーリン/撃破役(ローグ) PL:妖くん
ドラウの傭兵団、テーマはブレガン・ドゥエイアゼ・スパイ。
オープニング1:決別
市長の執務室。気のふれたソマン・ガルト市長の眉間にスローイング・ナイフが突き立った。風を切るナイフの投擲音と同時に聞こえるブレード・ソング、懐かしい声。
――キムリル。事件の最初で死んだ女。“アラゴンダーの息子たち”の指導者。腕利きのハーパー・エージェント。プラチナの母。多くの謎を抱えたまま舞台裏へと消えた彼女は、颯爽と登場した。
プラチナ「キムリル、生きていたの?」
キムリル「生きているし、足もある。ただ、死を偽装してまで隠れる必要があった」
ギルターク「何のためだ?」
キムリル「私たちハーパーにはやるべきことがある。そこためには圧制者を打倒する必要があった。ただ、その為の組織である“アラゴンダーの息子たち”に不穏分子が紛れ込んだ。構成員のメンテナンス、そして呪力の座から囁く声から逃れるために隠れる必要があった」
アシュタール「まずプラチナに謝ることだ」
キムリル「そうだね。プラチナ、ごめん。私は自分の目的のために貴方を利用した」
プラチナ「許すよ。キムリルが帰ってきたならば」
キムリル「親子の感動の再会だね」
キムリルはプラチナに笑顔を向けると、握手をした。そして、キムリルは冒険者たちに望みを告げた。
キムリル「ネザリル、サーイ、アボレス主権国。様々な勢力がこの地で陰謀を進めている。事態がここまで進行してしまった今、ネヴァーウィンター市の中で争っている時間はない。ダカルト・ネヴァレンバー卿と会談させてほしい」
冒険者たちが見てきた事実と辻褄は合う。ただ、キムリルは必要なことであれば手段を選ぶ人間ではない。信頼していいものか。
冒険者たちがキムリルの値踏みをする中で、“アラゴンダーの息子たち”の襲撃部隊リーダーのアーロン・ブレードシェイパーが激昂する。
アーロン「ふざけんな。後から来て、今更ネヴァレンバーと話せ、だと」
キムリル「貴方もネヴァレンバーと話すことには同意していたじゃないか?それに、理由はそこにある」
ソマン・ガルド市長の体が溶け、消えていく。魔術的な成りすましだ。
ベアトリス「会談の場でネヴァレンバーに手出しはしないと誓えるか」
キムリル「約束する」
アーロン「考えさせてくれ」
アーロン・ブレードシェイパーは取り巻きの死鼠団、アンデッドと思しきフードの連中と共に退出した。
オープニング2:汚染
ネヴァレンヴァー卿の執務室。ダカルト・ネヴァレンバーは厄介ごとを持ち込んだ冒険者たちを不満そうに見ながら言った。
ダカルト・ネヴァレンバー「それで、君たちは我が市長を殺害した女を連れてきたというわけか」
キムリル「市長はすでに殺されていたわ。市長の生死など問題ではない連中に」
ギルターク「亡くなった市長は、随分仕事熱心だったようだ」
ギルタークの視線の向こうでソマン・ガルド市長の亡骸が登庁していた。確かに市長を操っていた者にとって、市長が死んでいても、何一つ変わりはないようだ。
ネヴァレンバー「衛兵!」
衛兵が飛び出すが、ソマン・ガルド市長の頭上には巨大な単眼の怪物が浮かんでいた。ビホルダー。衛兵たちでは太刀打ちできない。冒険者たちはソマン・ガルド市長とビホルダーを排除した。
執務室で戦闘を見下ろすネヴァレンバー。
ネヴァレンバー「我が優秀な市長が取り替えられていたことは、緘口令をしく」
様子を見て駆けつけたティーフリングの商人モルダル・ヴェイがネヴァレンバーに囁く。
モルダル・ヴェイ「だから言ったのに。街に火を放てと。ダカルト・ネヴァレンバー殿。貴方の幸運を祈ります。これからが最も幸運が必要になるのだから」
ネヴァレンバー「私は幸運などには頼らない。その為に不浄の者とも手を組むのだ」
ミドル1:ネヴァーウィンター市探索
ネヴァーウィンター市の地図で示される。探索できるのは全部で8箇所あったが、今回はNPCイベントと「遭遇①:顔のない女」を選択。
- NPC①:守護卿区“正義の館”(ダカルト・ネヴァレンバー)
- NPC②:ブレガン・ドゥエイアゼ駐屯地(ブレガン・ドゥエイアゼ現地責任者ザルビ)
- NPC③:千の顔の家(キムリル)
- NPC④:“アラゴンダーの息子たち”の拠点(アーロン・ブレードシェイパー)
- 技能チャレンジ:ヘルム砦の焼き討ち
- 遭遇①:顔のない女(難易度:高)
- 遭遇②:恐怖の岸辺(難易度:中)
- 遭遇③:野伏せりの帰還(難易度:中)
ミドル2:アーロン・ブレードシェイパー
キムリルと決別したアーロンは、下水道近くの“アラゴンダーの息子たち”の隠れ家に潜み酒を飲んでいた。周りには出自の明らかでない構成員。獣臭や死臭が漂う。
アーロンの意向に興味を持ったアシュタールが登場する。
アシュタール「深酒は身に毒だぞ」
アーロン「誰も彼もがいなくなりやがる。今まで、“アラゴンダーの息子たち”のために戦ってきたってのによ。みんな、キムリルに付いていった」
アシュタール「そうまでして、お前の先に何がある?」
アーロン「自由、夢、未来。力で何でもできると思っていたよ」
アシュタール「やり方はまずかったかもしれないが、お前の意志は認めている。ただ、邪悪と組むべきではない」
アーロン「もう少し早くそれを知っていたら。俺はこの街に悪魔を引き入れちまった!」
アシュタール「悪魔を倒すことも、悪魔を引き入れた者の責任だ」
アーロン「首輪を押さえつけることくらいはできるか。俺が居なくなったら手下たちが何をするか。俺はここで奴らを抑える」
アシュタール「ならば、私はお前の力になろう。この街に責任を持つ、ネヴァーウィンター・ノーブルとして」
ミドル3:ブレガン・ドゥエイアゼ
ブレガン・ドゥエイアゼ駐屯地。ギルタークが現地責任者のザルビと密談していた。
ザルビ「まさかキムリルが生きていたとはな。団長から言伝だ。この街の中心にいる奴らにくらいつけ」
ギルターク「いつだって、団長の言うことは正解だ。了解した。それと、メンゾベランザンから追っ手が来ていた。妹の手のものだ。団長には迷惑をかけると伝えてくれ」
ザルビ「お前が有能ならば、団は力を惜しまない。死ぬなよ、ギルターク」
ギルターク「二度も死ぬつもりはない」
ミドル4:キムリル
ブラックレイク地区の酒場“千の顔の家”。ハーパーたちの再会は強烈だった。寡黙なトラムも、店主のセリムもキムリルやプラチナと抱き合い、歓迎する。ハーパーの戦友にとって指導者のキムリルの帰還は飛び切りのニュースだ。
歓迎を終え、ハーパー・エージェントの顔になったキムリルは告げる。
「随分と時間がかかったけれど、これでこの地にいるネザリル帝国、サーイの勢力を排除できる」
ネザリル帝国はシャドウフェルとこの世の狭間にあるシェイドたちの王国、サーイは死霊術を極めたリッチの支配する魔法王国、どちらも邪悪な勢力だ。
プラチナ「ダカルト・ネヴァレンバーと手を結ぶの?」
キムリル「堕落した権力者とは組みたくはない。だが、ネザリルやサーイの脅威を打ち払うためには、この街で力を合わせる必要がある。私は手段を選ばないと決めたんだ」
プラチナ「分かっているよ。ボクはハーパー・エージェントだ。いざとなれば何だってする。いざとなれば、仲間と戦うことだって」
キムリル「成長したわね。プラチナ」
プラチナ「今はネヴァレンバーと戦わないほうがいいね。アーロンのことは許してあげて」
キムリルは不穏な笑顔を見せる。
キムリル「いいのよ。彼がそうなるように仕向けたのは私だもの」
ミドル5:ダカルト・ネヴァレンバー
守護卿区“正義の館”。ベアトリスはダカルト・ネヴァレンバーの執務室を訪ねた。彼女は、ネヴァーウィンター市におけるニュー・シャランダーのフェイの代表者である。政治的な状況を踏まえ、ネヴァレンバーはベアトリスの美しさを褒め称え、そして人払いをした。ここからは実際的な話だ。
ネヴァレンバー「私を訪問した理由を伺いたい、フェイの貴婦人。私の嫁になるためだけにこの地に来たわけではあるまい?」
ベアトリス「貴方に借りがあるのは事実だが、嫁になる件は訂正していただこう。ニュー・シャランダーとネヴァーウィンターの友好には段階が必要だ。信頼を築くためにも貴方の真実を教えてほしい」
ネヴァレンバー「私は正義と公正の代表者を自認している。時にそうならないことはあるが、この場で語る言葉は真実であることを約束しよう」
ベアトリス「アシュタールはネヴァーウィンターの正当な後継者だ。彼のことはどう扱う?」
ネヴァレンバー「好ましい友人だ。だが、この街の玉座をあけ渡す気にはならない。彼が救った街は28あるが、今も栄え続けている街は半分だ。私ならばこの街を必ず発展させられる。もっとも、私に娘がいたらぜひ嫁にやりたいがね」
ベアトリス「そして、自らの血脈にネヴァーウィンター・ノーブルを取り込むというのか。キムリルについては?」
ネヴァレンバー「忌々しい女だ。指導者というよりも扇動者と呼ぶべき、処刑台に送るべき罪人だ。だが、私は彼女にもっと相応しい役割を用意できる。この地に議会政治を導入したら、彼女は理想的な野党の指導者になれるだろう。私と天秤を保ち、この街を共に発展させていける」
ベアトリス「寝首をかかれないように気をつけることだ。最後だ。ニュー・シャランダーのフェイは正義を尊ぶ。何があっても邪悪の勢力とは手を組むな」
ネヴァレンバー「それはできない。私の夢はこの地に北方全域を跨る商圏を築くことだ。そのために私は手段を選ばない」
ベアトリス「その繁栄を私たちは許すことができない。だから、そうならないことを望むよ。それなら、私たちはよき友人になれる」
ネヴァレンバー「友人?嫁の件は真剣に考えてくれよ、ベアトリス。ほんの50年付き合ってくれればそれでいい。フェイの永遠の寿命からすれば一瞬だろう?」
ベアトリス「率直だな。考えておこう。この街にいる間に惚れさせてみるんだな」
クライマックス:顔のない女
冒険者たちは千の顔の家に集まって情報交換をしていた。
そこでアシュタールに手紙が届く。そこには「水銀横丁の放棄区画にて来ること」というメッセージが書かれていた。手紙を届けた少年は、貧民街に珍しい豪奢な馬車に乗った貴婦人から、駄賃と共にこの手紙を預けられたと言う。水銀横丁の放棄区画は人間が住むような場所ではない。アシュタールの出自から、人気のない場所に暗殺目的で誘う理由は想像できる。
ベアトリス「なぜ厄介ごとに首を突っ込むのだ?」
アシュタール「責任を取るためだ」
ベアトリス「お前はそういう奴だったな。まあいい。仲間が行くなら付いていくまでだ」
特に理由はないが全員がアシュタールについていく。誰もが共に冒険をする時間を大切に思っていた。残された旅の時間が短いのだとしても。
水銀横丁の指定された空き家にはデヴィルが潜んでいた。
ギルターク「お前の家か?」
アシュタール「いかつすぎると思うが」
エンディング:真実は闇の中
デヴィルたちは自堕落なチェンジリングの日記を守護するためにこの地に配備されていたようだ。日記には穏やかな貴婦人とチェンジリングの女性が仲良くなっていく記述と、貴婦人に言われて気に入らない守護卿の鼻をあかすために変身のポーションを購入したことが記されている。日記はキムリルへの襲撃があった三日前が最後の日付となっていた。
プラチナの脳裏にビジョンが浮かんだ。キムリルは襲撃の時点で確かに死んでいた。ただ、死体を持ち帰ることはできなかった。ポーションの持続時間が切れたとき、その場に残った死体はキムリルだったのだろうか。
エンディング:貴婦人
ティーフリングの商人、モルダル・ヴェイがカーテンの向こうにいる貴婦人に語りかける。
モルダル・ヴェイ「あれで良かったのですか?」
貴婦人「これで彼らは真実にたどり着く。あのフェアリーの少女が何を思い、何を為すのか。楽しみで仕方がないわ」
モルダル・ヴェイ「楽しみですか?せめて彼らの幸運を祈りましょう」
次回へ続く!