ネヴァーウィンター・キャンペーン 第八話「妖精郷の死闘」
黒野さんDMのD&D 4th ネヴァーウィンター・キャンペーンの八話です。
前回で、ニュー・シャランダーで暗躍していたアデミオス・スリードーンの策謀を暴いた冒険者たち。しかし、アデミオスはこれまでにニュー・シャランダーを混乱に陥らせ、闇のフェイ(悪い妖精たち)に情報を漏らしていた。
今回はニュー・シャランダーを闇のフェイの軍勢から護り、ニュー・シャランダー編を終えるとともに、ネヴァーウィンター地方全土を巻き込んだ陰謀の片鱗が見えてくる話です。
パーティー
各キャラクターの詳細は割愛。今回ははたはたさん、妖くん、緋の三人PLでした。戦力的に厳しい部分はヘンチマンとして寡黙なドワーフの狙撃手グランガン、ニュー・シャランダー評議員の一人である秘術弓士オリリエン・ミストクラウンが参加。オリリエンは各種魔法に加えてヒールもできるという、尊大な態度に見合う凶悪な性能でした。
- プラチナ/制御役(ブレードダンサー) PL:はたはたさん
ピクシーの少女。テーマはハーパー・エージェント。 - ベアトリス・ウィンターホワイト/防衛役(ソードメイジ) PL:緋
エラドリンの女騎士。テーマはイリヤンブルーエンのフェイ。 - ギルターク・ヴァーリン/撃破役(ローグ) PL:妖くん
ドラウの傭兵団、ブレガン・ドゥエイアゼのスパイ。 - 秘術弓士オリリエン、エラドリン、シャランダー評議員
- グランガン、寡黙なドワーフの狙撃手
オープニング:判決
アシュマダイ(ネヴァーウィンター市のアスモデウスの信徒のカルト組織)との書簡という動かぬ証拠を突きつけられたアデミオスは、激昂して怒りをぶつける。
「ニュー・シャランダーを汚した人間どもと交わろうとするメリサラ、ベアトリス。それを傍観することしかできない頭の固い役立たずども。お前らのような奴らがいるから、人間どもがのさばるのだ。そんなエラドリンは殺すしかない」
ベアトリスが叫ぶ。
「そんな理由で同胞を殺したのか!」
「こうなっては仕方がない。闇のフェイの力を借りてお前たちを粛清する。そして、再び清浄なニュー・シャランダーを取り戻す」
そういい残し、アデミオスは瞬間移動で脱出した。そして、ニュー・シャランダーの城壁を破壊する巨大な槌音が響き渡った。森の濃霧の中から、炎の巨人が出現し、ニュー・シャランダーの外壁(樹木で作られた堅固な結界)を破壊したのだ。巨人の周りでは多数の闇の猟犬がうなり声をあげている。
ニュー・シャランダーの防衛隊を指揮するオリリエン・ミストクラウンが防衛隊を呼ぶが、動ける防衛隊など残っていない。アデミオスの仕掛けた度重なる策謀によって、戦えるエラドリンの精兵は激減している。そんな中、評議長メリサラ・ウィンターホワイトは冒険者たちを静かに見つめていた。
戦えるものは我々しかいないとベアトリスが言い、冒険者たちに傭兵契約の続行を提案する。ギルタークとプラチナ、グランガンが応じた。
「傭兵として、やりかけた仕事は最後までやる」
「ボクたちの出番だね!」
黙っていたオリリエン・ミストクラウンは尊大な様子で冒険者に告げた。
「私も戦おう。足を引っ張るなよ、人間ども」
D&D 4th ネヴァーウィンターキャンペーン
第八話「妖精郷の死闘」
遭遇1:闇の猟犬
炎の巨人と闇の猟犬、闇のフェイによってニュー・シャランダーの防衛網は崩壊し、居住区の前の門が最後の防衛線となった。評議場からワープゲートを潜り門に現れた冒険者たちは彼らと相対する。
炎の巨人は2つの頭脳を持つ巨人エティンと同等のスペックを持つ強敵で、猟犬と闇のフェイは移動を阻害しつつ巨人の前に冒険者たちを移動させ、伏せさせるという戦い方を展開してきたが、6レベルの冒険者たちの敵ではなかった。
「アデミオスがいる限り、闇のフェイは抜け道を使ってニュー・シャランダーに攻めてくるだろう。この戦争を終わらせるためにはアデミオスを倒すしかない」
冒険者たちはアデミオスを追撃し、闇のフェイの本拠地に潜入した。
遭遇2:秘密の洞
闇のフェイの本拠地はニュー・シャランダー森の秘密の洞の奥に秘匿されているワープ・ゲートの奥にあった。ゲートを潜った冒険者は闇のフェイの祭事場に転送される。そこには残忍なレッドキャップ(悪くて残酷な妖精)とアデミオスがいた。
アデミオスは憎悪に狂った目で冒険者たちを睨み付ける。
「ベアトリス、お前が大人しくしていれば、ここまで戦争をせずに済んだ。薄汚い人間どもと組むくらいなら、闇のフェイと手を結んだ方がマシだ」
「それは最早ありえない話だ、アデミオス。お前や闇のフェイのせいで多くの同胞が死んだ。同胞の復讐は何が起きても果たさせてもらう」
両手に大振りの斧、短剣を持った残忍なレッドキャップたち。加えて、天候を操る強大な呪術師と、魔力系魔法使いのアデミオス。冒険者たちは厳しい戦闘の果てに闇のフェイの勢力の撃退に成功した。
深手を負ったアデミオスは逃亡したが、その足跡は恐怖環と呼ばれる邪悪なエリアへと続いている。まだ何かあるのか?
遭遇3:サーイ帝国の鮮血部隊
ネヴァーウィンター地方に干渉する大勢力、死霊術の国サーイの支配者リッチのザス・タムが神格に至るための冒涜的儀式のために建造した要塞兼儀式焦点具が恐怖環だ。ここには、命なきひび割れた黒い石が邪悪な意図をもって配置されている。
逃げ出したアデミオスは恐怖環に進入したが、顔見知りであったはずのサーイ帝国の鮮血部隊によって処刑された。彼らは侵入者を撃退する命令を受けており、慈悲など持ち合わせていなかったのだ。
冒険者たちがこの地に到着したのはその後であった。護衛騎士団No.3のラズラティスは、部隊長であるサーイ帝国第五階梯魔術師“極光の”フレッチャーに問いかける。
「マスター、また侵入者が着ましたぜ。殺っちまいますか」
「決まっている。すべて殺す。彼らは特に念入りにな。フェアリーやドラウは貴重な検体となる」
「任務といえ面倒ですな」
彼らのやり取りを聞いたギルタークが問う。
「サーイ帝国がこの地で何を目的に動いている?」
「勇気あるね。でも、早死にするタイプだな。メンゾベランザンとは不可侵ってなってますけど、殺っちゃいます?マスター?」
「メンゾベランザンとは縁を切った」
続けてプラチナが問う。
「キムリルを、母さんを殺した陰謀にお前たちは係わっているのか?」
「知らんなぁ。ただ、お前、ハーパーか。なら殺そう。ハーパーは殺しつくさなければならない」
「そう言って母さんも殺したのか?サーイこそ、必ず倒されなければならないんだ」
「死んだ家族でもいるのか?ならば、ハーパーを裏切り、我らと手を組め。この世界で死を超越したのはサーイ帝国だけだ。サーイ帝国ならばお前の家族も取り戻せる」
「黙れ!」
ギルタークは彼らがキムリルのことを知っていると看破した。この会話の中には何か嘘がある。ただ、その内容は今はまだ分からない。
鮮血部隊は強力な敵で、かつ統制されている。彼らは一人ずつ集中的に攻撃を行い、最初のターンにベアトリスが倒れかけるほどの攻撃力だった。しかし、一箇所に密集した鮮血部隊を冒険者たちは範囲攻撃で倒していった。騎士ラズラティスを除いて。
騎士ラズラティスは騎士であり、伝説級のヴァンパイアでもある。支配と吸血の能力を使う彼には、オリリエンの光輝ダメージを除いて有効な打撃を与えることができず、そして彼は吸血するたびに回復していく。
「マスターが死んだのかよ。聞きしに勝る強さだな」
5ターン目、重症状態となったラズラティスは霧となって消えていった。冒険者たちの情報はサーイ帝国に持ち帰られ、また新たな作戦が立てられるのだろう。
エンディング:選択
ニュー・シャランダーの評議会。かつて裁判の被告としてここに来たときと違い、冒険者たちを迎えるエラドリンたちには敬意があった。ニュー・シャランダーの危機を救ったのが冒険者たちであることは、彼らの全員が知っていた。
評議長であるメリサラ・ウィンターホワイトが感謝を告げる。
「ネヴァーウィンターに始まり、ニュー・シャランダーを揺るがしたアデミオスの策謀は潰えました。ありがとう。私たちは受けた恩は忘れません」
ギルタークが答える。
「ブレガン・ドゥエイアゼは君たちの戦争を望んではいない。今はベアトリスに雇われていて、金払いもいいからな」
仏頂面でオリリエン・ミストクラウンが言う。
「ドラウ、フェアリー。私はオリリエン・ミストクラウン。名を名乗れ」
ギルタークとプラチナは苦笑いしながら、名を告げる。
「ギルターク、プラチナ。私はエラドリン以外は信用しない。ただ、お前たちは別だ。我が友ギルターク、プラチナよ。私はお前たちのために力を尽くすことを惜しまないよ」
メリサラは冒険者たちに選択肢を告げる。
「現在分かっている範囲で、あなた方にとって有益な選択肢は3つあります」
「第一はネヴァーウィンターに戻る。あの地ではまた新たな動きがあるでしょう」
「第二はサーイ帝国の動向を探るためにサーイ帝国に向かう。キムリルの死の真相を探るために有効な情報が得られるでしょう」
「第三はニュー・シャランダーに隠された遺跡の探索。いにしえのフェイが残した遺産は貴方たちに事態を解決する力をもたらすでしょう」
ベアトリスがプラチナに言う。
「これまで私はお前たちに助けられてきた。今度は私がお前たちを助ける番だ。何でも言ってくれ。私はお前の道を拓く剣となろう」
「ボクはネヴァーウィンターに戻るよ。今回の事件はすべてあの街を中心に起きている。真実にはそれが一番近道に思えるんだ」
かくして、冒険者たちはネヴァーウィンターに帰還した。
ネヴァーウィンターを覆う策謀の真相は明らかになるのか?
次回へ続く!